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フード産業に革命?コロナから生まれた新たな飲食ビジネストレンド

新型コロナを機に、フード産業にも大きな変化が表れています。消費者意識やサプライチェーンの変化とともに、コロナから生まれた新たな飲食ビジネストレンドから、未来の投資のヒントが見つかるかもしれません。

消費者意識の変化

ロックダウンや自粛により自宅で過ごす時間が増えたことは、多くの人にとって生活スタイルと健康の関連性について見直すきっかけとなりました。

食生活もその一つです。エシカルフード(環境や社会に配慮したサプライチェーンに基づく食料品)に関する市場調査企業Ecovia Intelligenceのデータによると、欧米やインドの大型スーパーやオーガニック食品店などでは、オーガニック食品の売上が前月と比較して最大40%増えたことが明らかになるなど、体と地球に優しい有機野菜や無添加食品への関心が、急激に高まっています。

またロックダウン中に世界各地でCO2排出量が減少したことで、食品産業分野におけるエネルギー使用量や CO2 排出量、食品ロスといった問題を意識する消費者が増加傾向にあります。

サプライチェーンの変化

このような変化に対応すべく、輸入や遠方からの輸送に過度に依存しない、ローカル・サプライチェーンの構築により、地産地消を目指す動きが多数の企業間で加速しています。

遠方からの輸送を軸とする既存のサプライチェーンが、ロックダウン下で崩壊したことを教訓に、緊急時に耐性のあるサプライチェーンを構築すること、そして物流拠点を集約化し輸送プロセスの簡潔化を図ることで、環境負荷を低減する意図があります。

さらに、AI(人工知能)やブロックチェーン、産業ロボットといったテクノロジーを活用し、生産性の向上とコスト削減を強化する動きも見られます。

ゴーストキッチンやフードデリバリーの需要が拡大

外食産業では感染リスクへの懸念から、ロックダウン解除後も外食を控えている消費者の間で、ゴーストキッチンやフードデリバリーの需要が急拡大しています。

ゴーストキッチンとは店舗をもたないデリバリー専用レストランで、提携先のレストランやカフェのメニューを宅配するUberEatsのようなサードパーティーのアプリを介して、注文を受けます。

中でも米国最大のフードデリバリーサービスDoorDashは、ロックダウン中に著しく売上を伸ばし、サードパーティーによるフードデリバリー市場の45%を独占。ライバルであるUberEats(28%)やGrubhub(17%)を大きく引き離し、2020年6月の資金調達ラウンドでは6億ドルを獲得。評価額が160億ドルに達するなど、急成長を遂げています。

このような需要の拡大も、「外食で感染リスクに晒されるより、自宅で家族や友人と質の高い料理と時間を楽しみたい」という消費者意識の変化に根差すものです。

またコロナ不況が懸念される中、同じレストランのメニューでも、フードデリバリーを利用するほうが経済的であることも、人気の理由の一つでしょう。

外食は「量より経験」の時代に?ユニークなアイデアが続々登場

外食産業にも変化に対応するための、新たな戦略が求められます。「必要は発明の母」ということわざ通り、ニューノーマル(新しい常識)の環境下でも消費者を魅了する、ユニークなアイデアが次々と登場しています。

1. 外食中もソーシャルディスタンスを実現「グリーンハウス/ドーム型レストラン」

アムステルダムのベジタリアンレストラン、Mediamaticは各テーブルを透明のグリーンハウス(温室)で仕切ることで、ソーシャルディスタンスを維持すると同時に、プライベートなVIP空間を演出しています。

Mediamatic(画像:Mediamatic ETEN: Our Serresより引用)

運河沿いというロケーションとキャンドルの灯りなどを効果的に利用した、グリーンハウスとは思えないスタイリッシュな雰囲気です。

Mediamatic(画像:Mediamatic ETEN: Our Serresより引用)

またトルコのレストランも、同様のアイデアを取り入れています。ただしこちらはグリーンハウスの代わりに、ガラス製あるいはプラスチック製のドームでテーブルを覆うというもの。各ドーム内には冷房やカーテンが設置されており、夏場の利用も快適です。

トルコのレストラン(画像:FAVORFLAV: RESTAURANT IN ISTANBUL ZET CORONA-PROOF KOEPELS OP TERRASより引用)

コロナを機に消費者が楽しみながら利用できる、新しいシステムやデザインを採用したレストランは、料理やサービス料を高めに設定しても、新しいディナー体験を楽しみたい消費者からの予約が後を絶たないといいます。

2. 食のビジネスの多角化に挑むレストラン

最早レストランは飲食を行うだけの場所ではなく、多様な食のビジネスの発信地となりつつあります。

本来レストランのメニューは、テイクアウトやデリバリー用に考案されたわけではないため、包装が難しかったり、宅配中に質感や風味が損なわれてしまうものもあります。対応策として、メニューを冷凍または冷蔵配達することで質感や風味、形状をキープし、利用者が食べる直前に料理を温めるという、「ヒート・アンド・イート(温めて食べる)」という手法を取り入れるレストランが増えています。

好みの料理が届くミールキットと共通点がありますが、実在のレストランのメニューを楽しめるというメリットがあります。ほかにも、店内で使用している食材をまとめ買いできる「ホールセール(卸売り)」、お気に入りのレストランのメニューが定期的に配達される「サブスクリプションサービス」など、既存のレストランのイメージを一新するアイデアが尽きません。

コロナで進化する新しい食文化

コロナ以前から高まっていた、健康志向の向上やモノより体験を重視するなどの消費者意識の変化は、今後はさらに加速すると予想されます。

withコロナ、そしてアフターコロナは、以前のように「食べ物を売る・買う・作る・食べる」ことを目的とする構造が影を潜め、食べ物の質や安全性、食にまつわる経験がもたらすウェルネスの向上を重視した、食文化がトレンドとなるのではないでしょうか。

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