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EコマースからAコマースへ 進化するオンラインショッピング市場

Eコマース市場の需要拡大にともない、AI(人工知能)やAR(拡張現実)などの技術を活用した「Aコマース(A-commerce)」への移行が加速しています。テクノロジーとともに進化する、コマース市場の未来の姿を覗いてみましょう。

Aコマースが加速している理由

新型コロナの影響による需要拡大を受け、市場調査企業eMarketerは2020年の世界の小売Eコマースの売上高が、約3.9兆ドルに達すると予想しています。

一方、店頭売上が減少傾向にあり、店舗事業の縮小を余儀なくされる小売店も少なくありません。このような売上構造の変化にともない、新たな販売システムと業務のさらなる効率化が必要とされています。

近年では、消費者がよりパーソナル化された利便性の高いオンラインショッピング体験を求める傾向があるため、AIやARなどの技術を駆使した「Aコマース」が加速しているのです。消費者のニーズの変化への迅速な対応はブランド競争力の強化につながります。

Aコマースとは?3つのタイプ

Aコマースは比較的新しい領域であるため、明確な定義は確立されていないものの、現時点においては以下の3つがAコマースとして認識されています。「需要の拡大・ブランド力の強化・カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の向上・業務の効率化」という共通の目的があります。

1 AIコマース(Artificial Intelligence Commerce)

AI技術はコマース分野において、マーケティングから販売プロセスの効率化、チャットボットや音声認識アシスタントなどによる顧客対応まで、多岐にわたり活用されています。

例えばAI検索や視覚検索といった、次世代の検索システムが、カスタマーエクスペリエンスの向上に役立っています。

検索機能を利用して商品やサービスを探す際、キーワードと関連性の低い結果が表示されることに対して、ストレスを感じる消費者も少なくありません。

例えば米スタートアップTwiggle が開発したAI検索システムは、自然言語処理を利用して検索結果を絞り込み、コンテキスト化することが可能です。コンテキスト化とはキーワードだけではなく、その前後関係も読みとることで、より関連性の高い検索結果を表示するための技術です。

あるいはAI画像認識プラットフォーム「Clarifai」のように、機械学習技術を活用して、テキストの代わりに画像や動画で検索できる視覚検索システムの需要も拡大しています。

開発者は同社のプラットフォームを利用し、簡単に視覚検索機能を搭載したアプリを開発できます。

2 拡張コマース(Augmented Commerce)

ネットショッピングは利便性が高い反面、「届いた商品が、写真からイメージしたものと違っていた」など、落胆することもあります。拡張コマースはこのようなジレンマの解決策として、AR技術で商品をよりリアルにイメージできる機会を提供しています。

特に家具のように大きなものは、実際に部屋に配置してみるまでイメージがわきにくいものです。近年はIKEAのプラニングツールのように部屋の大きさを設定し、商品を配置したりスタイルや色を選んだりすることで、3D完成図をチェックできるサービスも人気です。

しかし拡張コマースはそこからさらに進化し、仮想空間でのリアルな体験を実現しています。例えば米オンライン家具業者Wayfairの拡張コマースアプリを利用すれば、顧客は自分でデザインした空間をリアルに体験することができます。

また集客や顧客エンゲージメントの向上を重視している点も、拡張コマースの特徴です。

世界的に人気のアパレルブランドZaraはARアプリ「Zara AR」を開発し、全米の実店舗でサービスを展開しています。アプリをダウンロード済みのスマホを店内の所定の位置に置くと、新シーズンの商品を身に付けたファッションモデルが、店内を歩きながら会話をしている疑似映像がスクリーンに表示されるという仕組みです。

Zara AR のローンチ以来、AR体験のために店舗を訪れる顧客が増え、口コミの宣伝効果にも繋がっています。

美容業界ではARで疑似メイク体験ができる、ARメイクアップアプリの開発が加速しています。これは自分の顔写真をアップロードし、新しいメイクやヘアスタイルを疑似体験できるというもの。

世界最大の化粧品メーカー、ロレアルは、2018年にカナダのAR美容アプリスタートアップ、ModiFaceを買収して独自のアプリを開発するなど、ARの可能性に自社の未来を託しています。

3 自動化コマース(Automation Commerce)

自動化コマースの領域は、販売側と消費者側に大きく分けられます。

販売側にとっての自動化コマースは、自動化ソフトなどを用いて運営上のタスクや受注・発注プロセス、キャンペーンの開催など反復的な作業を、自動的に実行することを意味します。あるいはAmazonのように、倉庫内での梱包作業まで自動化している例もあります。

一方消費者側にとっては、購入の自動購買を指します。

例えば海外旅行の際、意外と手続きが面倒なのが海外旅行保険の加入です。しかし万が一に備えて保険はしっかりとかけておきたいもの。そこで便利なのが自動的に加入できる旅行保険です。

英デジタルバンクRevolutのアプリは、GPS(位置情報)機能からユーザーが出国したことを察知すると、自動的に旅行保険に加入してくれる優れもの。掛け金は日割り計算されるため、気軽に旅行中の安心感を買える点も魅力です。

身近なサービスでは、食品や日用品の定期購入があります。うっかり買い忘れてしまいがちなひげ剃り用品の定期便を、顧客のスケジュールに合わせて発送してくれる米メンズコスメ店Dollar Shave Club、同じく男性用の靴下や下着の定期便を発送してくれるBlacksocksなど、日々の暮らしを快適にしてくれる自動化コマースが続々と生まれています。

Aコマースで消費はどう変わるのか?

Aコマースへの移行により、オンラインショッピング体験は劇的に向上すると期待されています。未来の消費はより利便性とエンターテイメント性が高く、よりリアルでパーソナライズされたものになりそうです。

一方Eコマース業者にとっては、新たな顧客層を開拓し売上を伸ばすチャンスをもたらすと同時に、存続を維持する上で欠かせない変化となることが予想されるため、顧客ターゲットに効果的なAコマース戦略を今から準備しておく必要があるでしょう。

EコマースからAコマースへ。来るべき変化をいち早く察知することで、投資のアイデアも得ることができるかもしれません。

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