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米国と中国の景気回復の見通しの違い について

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新型コロナウイルスの封じ込めに成功している中国への長期的な見通しは良好

〔要旨〕

✔︎中国政府による株式市場へのサポートの背景を解説

✔米国株式市場に織り込まれている景気回復の見通しを考察

●政府支援と新型ウイルスの封じ込めの成功が中国株式を後押し

—政府の支援に支えられ、中国株式は堅調を維持

—新型ウイルスの制御に関する中国政府への信任が、株価や景気回復のサポート要因に

●米国で強まる新型ウイルスの再拡大への懸念

—米国株は上昇基調も、感染の再拡大への懸念が強まる

—アトランタ連銀総裁は米国景気の先行きへの懸念を明確に示す

—感染状況が景気回復の見通しを左右する中、大型長期成長株への投資が活発化

—①ウイルスの感染拡大を抑え込む米国の能力、②より多くの財政刺激策―が米国景気の見通しを明るいものに導くだろう

前週、中国と米国の株式市場はともに上昇しました。しかし、現在、両国の長期的な景気回復に対する市場関係者の見通しには、明確な違いが存在しています。

政府支援と新型ウイルスの封じ込めの成功が中国株式を後押し

政府の支援に支えられ、中国株式は堅調を維持

前週、上海総合指数は、(金曜日は下落したものの)一週間で7.3%、前月末からは13%以上の上昇となりました 1 。国営の新華通信社が主管・発行する中国証券報は、7月6日に「健全な株式市場の上昇」の重要性を第一面に記載し、中国株式市場への政府の支援が紹介されました。当該記事では、2014-2015年のような株式市場の急騰を回避しつつ、中国当局が株式市場への継続的な資金流入をサポートし、市場を下支えする意思があることが示されています。その理由は数多くあります。第一に、中国企業は、金融やテクノロジーを含むさまざまな分野での競争力を高めるため、資本を必要としています。第二に、パンデミックと米中間の緊張の高まりを考えると、他国への経済依存度を低め自国主導型の経済に進むことは、自国の命運を自らが決められることになるため優先度が高くなります。これには、「資本市場の富の効果」を国民が恩恵を受けられるように働きかけることも含まれます。中国がグローバリゼーションにおける重要な役割を放棄するわけではありませんが、グローバリゼーションを進めると同時に、同国はより強力で独立した国への成長を目指していると考えます。

新型ウイルスの制御に関する中国政府への信任が、株価や景気回復のサポート要因に

現状、中国の感染者数は623例のみとなっており 2、新型ウイルスの制御に関する中国政府への信任も、中国株式のサポート要因となっています。また、堅調な株価推移は、第二波への対処についての中国への信頼感の高まりや、中国の比較的堅調な景気回復を示唆しているものでもあります。例えば、民間発表の6月の中国サービス業PMIは58.4と、前月の55.0から上昇しました 1 。一方で、中国の製造業部門の回復は、その海外依存度の高さを考えると、サービス業ほどに強くはなさそうです。しかし、全体的な中国の景気回復は依然として堅調と考えられることから、中国景気への前向きな見方を背景に、中国株式は堅調さを維持すると考えています。

米国で強まる新型ウイルスの再拡大への懸念

米国株は上昇基調も、感染の再拡大への懸念が強まる

一方、米国でも、政府の支援(主に米連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金融政策)に支えられているS&P500種指数は、前週末比1.76%上昇しました 1 。ただし、米国が新型ウイルスの感染拡大を抑えられていないことへの懸念が高まっています。米国では、多くの地域で新規感者数が増加しており、7月11日には全米で6万3千人あまりの症例者が報告されました 3

アトランタ連銀総裁は米国景気の先行きへの懸念を明確に示す

アトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁は、前週、「我々が目にしているいくつかのことは憂慮すべき事態であり、景気回復の道のりは起伏の激しいものになる可能性がある 4 」と発言し、米国景気の先行きへの懸念を明確に示しました。そして、不確実性の高まりについても「我々は状況を非常に注意深く観察しており、実際に何が起こっているのかを見極めようとしている」と述べました。

感染状況が景気回復の見通しを左右する中、大型長期成長株への投資が活発化

米国株式市場では、ハイテク関連株が市場平均を大幅に上回る推移となっており、これは新型ウイルスの感染状況に関する統計が、その違いの背景となっていると考えます。市場関係者は米国の感染状況を懸念しており、また、これらの株式市場の動きは米国の景気回復の形状への見通しも反映していると考えます。米国株式市場は、遅く、不均一で、たどたどしい米国経済の回復を予想しており、過去に、そのような環境下でアウトパフォームしてきた大型の長期成長株への投資が足元で活発です。

①ウイルスの感染拡大を抑え込む米国の能力、②より多くの財政刺激策―が米国景気の見通しを明るいものに導くだろう

ただし、これらの見通しが今後、変化する可能性は十分にあるでしょう。米国の景気回復についてより楽観的な見方を支えるものとして、①米国のウイルスの感染拡大を抑え込む能力、②政府からのより多くの財政刺激策(特に新型ウイルスにより経済的に大きな打撃を受けた部門への支援)—が考えられます。マスクの着用が常態化されることは、前者を実現する上で重要でしょう(前週末、トランプ大統領が公衆の面前で初めてマスクを着用したとき、米国は新たな一歩を踏み出しました。おそらくマスクを着用する人が増加するでしょう)。また、米国議会では追加の財政支出を検討しており、今月中にも実行される可能性があります。私たちは、これら2つの状況を注視していきたいと思います。

1.出所:ブルームバーグL.P.。
2.出所:スタティスタ、2020年7月9日。
3.出所:米国疾病予防管理センター。
4.出所:フィナンシャル・タイムズ、“Federal Reserve official warns US recovery may be ‘levelling off’”、2020年7月6日。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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