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(画像=luca-lorenzelli/stock.adobe.com)

「濃厚接触追跡アプリ」が議論を呼ぶ、コンタクト・トレーシング・テクノロジーとは?

新型コロナの感染経路を特定する「濃厚接触追跡アプリ」の基盤となる、「コンタクト・トレーシング・テクノロジー(Contact Tracing Technology/接触追跡技術)」。現在、GoogleとAppleがiOSとAndroidの両方で動作するアプリの実装に向け、公衆衛生当局が利用できる「Exposure Notification(濃厚接触の可能性を検出するシステム)」と呼ばれるシステムを共同開発・提供中です。

世界中の公衆衛生局がユーザーのスマホを介してウイルスの感染をモニタリングし、感染者と濃厚接触したユーザーに警告を発することができる画期的な試みではあるものの、プライバシー保護への懸念も高まっています。

コンタクト・トレーシングとは?

厚生労働省は新型コロナの潜伏期間を1~12.5日と発表していますが、感染者が過去に濃厚接触したすべての人を記憶あるいは把握しているとは限りません。

そこで注目されているテクノロジーが、スマホに搭載されたBluetooth(近距離無線通信技術)やGPS(衛星測位システム)などを活用し、ユーザーが濃厚接触した相手を追跡する、コンタクト・トレーシング・テクノロジーです。

「濃厚接触追跡アプリ」はコンタクト・トレーシング・テクノロジーをベースに開発されたアプリで、台湾や韓国などの公衆衛生局は独自に開発したアプリを介して、国内の感染拡大を監視し、感染者に接触した可能性のある人に警告や検査のアドバイスを行っています。

重症患者の増加を抑制する手段として、現在は中国、シンガポール、英国、ドイツ、イタリアなどが採用や検討段階にあります。

APIとBluetoothで感染経路を追跡

AppleとGoogleの狙いはiOSとAndroid間の相互運用を可能にするアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)とBluetooth追跡機能を共同開発し、各国の公衆衛生局のコンタクト・トレーシング・システムの向上に貢献すると同時に、iOSとAndroidの両方のスマホユーザーが「濃厚接触追跡アプリ」をより日常的に利用できる環境を提供することです。

オペレーション・システム(OS)上にインストールして利用するソフトウェア全般をアプリケーションといい、APIは異なるアプリケーションに互換性をもたせるための仲介役を果たします。

Bluetoothは1~10メートル以内の近距離データ通信が可能なため、近距離で接触した相手のスマホからお互いのデータを通信できるという特性があります。

公衆衛生局は両社のプラットフォーム上から、「Exposure Notification API」と名付けられたこのAPIを自国の濃厚接触追跡アプリと接続することで、ユーザーのスマホが発するBluetoothの電波を利用して、濃厚接触した相手を必要に応じて追跡できるという仕組みです。

ユーザーがAppleとGoogleのサイトから濃厚接触追跡アプリをダウンロードしてシステムの利用を許可すると、Bluetoothの接触検出システムが起動。スマホ同士がランダムに生成される識別子(端末を識別するID)の交換を始め、接触したユーザーすべての識別子を14日間保存します。

感染が発覚したユーザーがアプリでその旨を自己申告すると、識別子から濃厚接触者を検知して警告を送信します。

プライバシー保護への懸念と対策

両社による今回のコラボレーションは感染拡大防止に大いに貢献すると期待されている反面、ユーザーのプライバシー保護への強い懸念が浮上しています。

これに関して両社は、プライバシーを保護するためのテクノロジーが採用されており、データの使用を最低限に抑え、「デバイスからユーザーの位置情報などを収集することはない」と主張しています。

また、識別子の生成を定期的にローテーションすることでユーザーを匿名化するといった対策が講じられているほか、感染結果や接触に関する情報はユーザーが許可するまでスマホ内部に保存され、外部と共有されることがない点、警告を受けたユーザーに感染経路を通知せず匿名性を厳守している点などを安心材料として挙げています。

つまり「情報共有の権利はあくまでユーザー側にある」ということになります。

より強力なプライバシー保護対策が必須?

しかし膨大な量のデータが不正に利用される、あるいは漏洩した場合、深刻な問題を引き起こすリスクは否めません。Appleは2019年の時点でiPhoneのユーザー数を9億人、GoogleはAndroidのユーザー数を25億人と見積もっています。

「Exposure Notification 」は2020年5月20日から各国の公衆衛生局に正式に公開されており、両社は2020年後半を目途に、アップデートを通してiOS とAndroidにコンタクト・トレーシング機能を組み込むことを計画しています。

しかし消費者が心から信頼できる利用環境を整備し、テクノロジーの恩恵を最大限に活かすためには、より強力な対策が必要になるかもしれません。例えば新型コロナ以前から議論されているように、ユーザーのプライバシー保護に関する国際規制の厳格化など、世界規模の取り組みが必要になるものと推測されます。

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