100万円投資ガイド 目的に合わせた賢い運用方法について解説

手元に100万円の資金がある場合は、どのような投資手法が選択肢になるでしょうか。まとまった資金があると様々な金融商品を購入できますが、前提としては目的に合ったものを選ぶことが重要です。本記事では100万円で始められる投資の種類や手法、運用方法の考え方について解説します。

100万円の投資手法は「目的」と「ライフスタイル」から選ぶ

100万円の投資手法は、ご自身の目的やライフスタイルを踏まえて選ぶことが重要です。たとえば、目標金額や運用期間、許容できるリスク、費やせる時間などによって、実践しやすい投資手法は変わってきます。

金融商品には多くの選択肢があるため、単に目を通すだけでご自身に合ったものを選ぶことは難しいでしょう。また、購入方法の違いで運用結果が大きく変わることもあります。

同じ投資資金でも人によって向いている手法は異なるため、まずはご自身のライフスタイルを見直し、投資の目的を明確にすることから始めましょう。

100万円で始められる投資の種類

100万円で始められる投資には、どのような種類があるでしょうか。ご自身に合った手法を選ぶには、各金融商品の特性を押さえておくことが重要です。

以下では、代表的な金融商品の特徴や仕組み、最低投資金額などをご紹介します。

国内株式

株式は、株式会社が資金を調達するために発行する金融商品です。1株あたり1,000円のように取引価格(株価)が決められており、購入時よりも株価が上昇したタイミングで売却すると、差額分の譲渡益をリターンとして受けとれます。

また、株式には業績などに応じた配当金を投資家に分配している銘柄もあります。銘柄によっては、年数回のペースで保有株式数に応じた配当金を受けとれるため、株式は定期的なリターンにも期待できる金融商品です。

株式のうち、国内企業が発行しているものは「国内株式」、外国企業が発行しているものは「外国株式」と呼ばれます。国内株式については、保有株式数などの条件を満たすと割引券やオリジナルグッズなどの特典(株主優待)を受けとれる銘柄もあります。

国内株式の取引単位は基本的に100株(1単元)からですが、1株から取引できるミニ株(単元未満株)のサービスを用意している証券会社も見られます。そのため、証券口座の開設先によっては1,000円程度の資金からでも投資できます。

外国株式

外国株式には、米国株式や中国株式、シンガポール株式など様々な種類があります。地域によって特性は異なりますが、いずれの外国株式も為替レートの影響を受ける点は共通しています。

たとえば、1ドルが140円のときに100ドル分(1万4,000円)の米国株式を購入したとしましょう。仮に株価の変動がなかったとしても、1ドルが150円になると資産価値は1万5,000円(150円×100ドル)になります。

また、取引単位が1株からの銘柄や株主還元を重視した銘柄が見られる点も外国株式の特徴です。なかでも米国株式には、数十年にわたって配当金を増やし続けている連続増配銘柄もいくつか見られます。

投資信託

投資信託は、投資家から集めた資金でひとつのファンドを形成し、世界中の様々な資産に投資をする金融商品です。細かく見ると多くの種類がありますが、大別すると株価指数などに連動する「インデックス・ファンド」と、専門家が構成銘柄を厳選する「アクティブ・ファンド」の2タイプに分けられます。

投資信託の価格は「基準価額」と呼ばれており、購入時よりも基準価額が上がったタイミングで売却すると、株式と同じように譲渡益を受けとれます。また、ファンドによっては運用成績などに応じた分配金を受けとれますが、元本の払い戻しにあたる特別分配金(元本払戻金)については、投資家のリターンにはなりません。

株式との大きな違いは、構成銘柄(ひとつひとつの投資先)を自分で選ぶ必要がない点です。ただし、その代わりに信託報酬と呼ばれる手数料が毎日差し引かれることになります。

最低投資金額については1万円が目安となりますが、積みたて型のサービスでは毎月100円から始められる場合もあります。

ETF(上場投資信託)

投資信託のうち、証券取引所に上場されているものは「ETF(Exchange Traded Funds)」と呼ばれます。一般の投資信託とリターンの仕組みは同じですが、比較してみると以下のような違いがあります。

主な違い ETF(上場投資信託) 一般の投資信託
銘柄数 少ない 多い
取引価格の決定 リアルタイムで変動する 1日に1回のみ
購入場所 証券会社のみ 証券会社や銀行など
手数料の種類 ・売買委託手数料
・信託報酬
・購入時手数料
・信託財産留保額
・信託報酬
信託報酬の高さ 一般の投資信託よりは低いものが多い ETFより高いものが多い
最低投資金額 1,000円~数万円 毎月100円から

(※手数料の内訳については、取引するファンドによって異なる)

ETFの最低投資金額は、銘柄ごとの「取引価格×取引単位」によって決まります。上記の通り、ETFの価格はリアルタイムで変動するため、購入するタイミングによって必要資金は変わります。

債券

債券は、国や自治体などが投資家から資金を調達するときに発行する金融商品です。国が発行するものは国債、企業が発行するものは社債のように区別しますが、全ての債券をまとめて「公社債」と呼ぶこともあります。

債券には購入時に利率が決まる「固定利付債」と、経済情勢などで利率が変わる「変動利付債」の2タイプがあります。いずれのタイプでも、満期を迎えたときに購入口数と利率に応じたリターンを受けとれます。

債券の最低投資金額は発行者(国や自治体、企業)によって異なります。例えば、日本の個人向け国債は1口1万円から購入できます。

REIT(不動産投資信託)

REIT(リート)は、投資対象をオフィスビルや住居などの不動産に限定した投資信託です。一般的な不動産投資とは違い、投資家自身で物件の管理や運用をする必要はありません。投資先の不動産に賃貸料収入などが発生すると、購入口数に応じた分配金が投資家に支払われます。

REITのなかでも国内で誕生したものは、「J-REIT(ジェイ・リート)」と呼ばれています。J-REITに限定すると、2024年3月時点では約60銘柄が上場されており、ファンドによって運用資産や分配金利回りが大きく異なります。

なかには数万円から購入できるJ-REITもありますが、基本的には10万~100万円程度の投資資金が必要です。

100万円を運用する投資スタイルの違い

100万円の投資スタイルは、金融商品を1度に購入する「一括投資」と、一定の間隔でコツコツと購入する「積立投資」に大きく分けられます。ここからは、一括投資と積立投資の違いについて解説します。

一括投資の効果

投資資金を小分けにする積立投資に比べると、一括投資は相場の上昇局面に強い特徴があります。購入直後から値上がりが続く場合は、初期の投資金額が増えるほど大きなリターンを期待できるためです。

ただし、投資金額はリスクにも比例するため、相場の下落時には大きな損失を抱えてしまうかもしれません。一括投資でリスクを抑えたい場合は、値動きの変動が少ない金融商品を選ぶなどの工夫が必要です。

積立投資の効果

積立投資は少額から始めやすく、感情にも左右されにくい投資手法です。特に購入金額と購入頻度を一定にする積立投資は、価格が安いときに多くの数量を購入し、高くなった場合は購入数量を減らせるため、平均購入単価を平準化する効果があります。

もし100万円を投資資金とした場合は、どのような積立投資が選択肢になるのでしょうか。以下では、運用年数別にわかりやすい例をご紹介します。

・1年間の積みたてを想定して、毎月約8万3,333円ずつを投資する
・5年間の積みたてを想定して、毎月約1万6,666円ずつを投資する
・10年間の積みたてを想定して、毎月約8,333円ずつを投資する

積立投資で購入のタイミングを分けると、時間分散の効果によってリスクを抑えられる場合があります。ただし、上昇局面が続くと一括投資のほうが有利になるため、どちらが優れているかを一概に言うことはできません。

100万円を投資したときのシミュレーション

実際に100万円を投資すると、平均的な利回りではどれくらいの運用成果を期待できるのでしょうか。ここからは以下の条件で、一括投資と積立投資をした場合のシミュレーション結果をご紹介します。

<シミュレーションの前提条件>
購入する金融商品:国内株式
利回り:2.33%(2024年8月末時点のプライム市場における単純平均利回り)
一括投資の方法:1銘柄に100万円をまとめて投資する
積立投資の方法:1年~10年の期間で100万円を小分けにして投資する
税金・手数料:考慮しない
資産額の記載方法:小数点以下は切り捨て
積みたて中のリターンの計算方法:金融庁のシミュレーターを使用

参考:日本取引所グループ「その他統計資料
参考:金融庁「つみたてシミュレーター

<一括投資のシミュレーション結果>

運用年数 資産額
1年 104万7,142円
5年 114万8,200円
10年 128万8,346円
15年 144万5,598円
20年 162万2,043円
25年 182万24円
30年 204万2,171円

<積立投資のシミュレーション結果>

運用年数 資産額
(1年間の積みたて)
資産額
(5年間の積みたて)
資産額
(10年間の積みたて)
1年 約101万円 約20万円 約10万円
5年 110万7,473円 約106万円 約53万円
10年 124万2,648円 118万9,380円 約112万円
15年 139万4,321円 133万4,552円 125万6,703円
20年 156万4,508円 149万7,443円 141万93円
25年 175万5,467円 168万216円 158万2,204円
30年 196万9,734円 188万5,298円 177万5,323円

(※積みたて期間中のリターンは、どのタイミングで株価が変動したかによって変わるため、最終的な資産は概算金額を記載。)

上記のシミュレーションでは利回りを固定している影響で、一括投資のほうが有利な結果となりました。なお、実際の利回りは変動するため、シミュレーション結果はあくまで参考程度に留めてください。

100万円を投資する方法の選び方3つ

100万円の投資方法は、どのような観点で選ぶとよいでしょうか。ご自身に合った方法を選ぶには、投資の目的やライフスタイルを意識することが重要です。ここからは、100万円を投資する方法の選び方についてご紹介します。

1.目標金額と運用期間から決める

目標金額と運用期間が決まると、投資の具体的なイメージをつかんだり、利回りを逆算したりすることが可能になります。参考として、以下ではリターンを再投資しない場合(単利運用)を想定して、必要な利回りを逆算する方法をご紹介します。

(目標金額-投資金額)÷(投資金額×運用年数)=必要な利回り

大まかにでも必要な利回りが分かると、様々な金融商品に目を通したときに候補を絞りやすくなります。目標金額の達成が難しそうな場合は、投資金額や運用年数の見直しを考えてみましょう。

2.許容できるリスクから決める

許容できるリスクとは、「どれくらいの損失まで受け入れられるか」を表すものです。損失が大きすぎると日常生活に影響する可能性があるため、ご自身の許容リスクはあらかじめ設定しておきましょう。

許容リスクの設定では目標金額や運用期間のほか、現在の年齢や収入、保有資産額などを考慮する必要があります。様々な観点から生活を見直し、100万円のうち「いくらまでの損失なら耐えられるか」を考えてみてください。

3.投資に費やせる時間から決める

投資に費やせる時間によっても、その人に向いている投資手法は異なります。

たとえば、変動が激しい金融商品に投資をする場合は、こまめに値動きを確認しなければなりません。投資先によっては、情報収集や分析に時間をかける必要もあるでしょう。

一方で、値動きが緩やかな金融商品を選んだり、毎月同じタイミングで積立投資をしたりする手法では、「ほったらかし投資」が選択肢になることもあります。普段のライフスタイルを踏まえて、ご自身に合った手法を考えてみてください。

目的に合った100万円の投資方法を選ぼう

金融商品には様々な選択肢があるため、ご自身の目的やライフスタイルに合ったものを選ぶことが重要です。いつまでにいくらの資産を貯めたいのか、情報収集に費やせる時間がどれくらいあるのかによって、100万円の投資方法は変わってくるでしょう。

将来の運用結果まできちんとシミュレーションした上で、目的を達成しやすい方法から検討してみてください。

※為替レート:1米ドル=141.1円
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。

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