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インフレ vs. 経済:直近のデータではともに期待とうらはらな内容に

インフレ vs. 経済:直近のデータではともに期待とうらはらな内容に

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • インフレ:米国では、インフレが予想以上に持続していることを示唆する直近のデータにより、インフレに対する市場の認識が変化
  • 経済:認識が変化しているのはインフレに対してだけではなく、直近のデータは、米国経済が多くの人が予想したより力強いことを示唆
  • どちらがより重要か?:目下、FRBがインフレ抑制にいかに心血を注いでいるかをみれば、インフレデータの方がより重要であるように思われる

米国における、気になる3つのインフレ指標

米国経済は多くの人が予想したよりも力強い姿をみせている

諸刃の剣:インフレ vs. 成長

似た状況は欧州でも

直近のデータをどうみるか

明るい兆し?

結論

ウラジーミル・レーニンはかつて、「何十年も何も起こらないことがあるが、数週間のうちに数十年分が起きることもある」と言いました。私は、この言葉は地政学についてだけでなく、インフレにもあてはまるのではないかと思います。インフレについていえば、この数週間は、その認識についても実際の動向についても、数十年に相当するような目まぐるしさでした。

米国における、気になる3つのインフレ指標

米国では、インフレが予想より持続的であることを示唆する直近のデータによって、インフレに対する市場の認識が変化しています。

  • 2月3日に発表された1月の米雇用統計で、経済が予想以上に好調であることが示されたのが全ての始まりでした。賃金の伸びは高くはありませんでしたが、インフレがさらに過熱しうるとの懸念に火をつけました。
  • その後2月14日に発表された米消費者物価指数(CPI)では、インフレ緩和のペースが前月の予想よりも緩慢だったことが示されました。
  • 最後に、2月24日に1月の米個人消費支出(PCE)統計が発表され、これが予想を上回る結果となりました。PCE総合価格指数は、前月比0.6%上昇で予想の0.5%上昇を上回り、前年同月比でも5.4%上昇と予想の5.0%上昇を大きく上回りました1 。PCEコア価格指数は前月比0.6%上昇で予想の0.4%上昇を上回り、前年同月比では4.7%上昇となりました1

PCEの発表の中で最も懸念されるのは、住居費を除くコアサービス価格ですが、これは前月比0.58%上昇し、前月比では最も大幅な伸びを示す記録の一つとなりました1 。これはインフレ要因として米連邦準備理事会(FRB)の大きな懸念の対象となっており、2月の米連邦公開市場委員会の議事要旨では、参加者から、住居費を除くコアサービス価格でインフレが十分緩やかとなっておらず、労働市場が非常にタイトなことから、この要因について上昇圧力が継続しうる、との懸念が表明されました。

これらのデータは、インフレに対する市場の認識を変え、金融引き締め政策に対する予想も変化させました。この重要な変化は、フェデラルファンド(FF)金利先物市場にも表れました。2月2日時点のFF金利先物の8月までの予想ターミナルレート(利上げの最終到達点)は4.88%でしたが、今回の3つのインフレ指標の公表を受け 、2月24日時点の8月までの予想ターミナルレートは5.4%となっています2

米国経済は多くの人が予想したよりも力強い姿をみせている

しかし、認識が変化しているのはインフレに対してだけではありません。最近のデータが示しているのは、米国経済が、多くの人が予想していたよりも力強いということです。

2月3日に発表された1月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を大きく上回ったことが全ての始まりでした。他のデータも、米国経済の回復力がより力強いとの見方を裏付けています。

  • 2月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は再び拡大領域に入り、8カ月ぶりの高水準となりました3
  • シカゴ連銀全米活動指数は、生産関連指数と雇用関連指数の改善により、12月の-0.46から1月には0.23に上昇しました4

ブラード・セントルイス連銀総裁は先週、「米国経済は、例えば6〜8週間前に市場が考えていたよりも、回復力があるようにみえる」と発言しました5

諸刃の剣:インフレ vs. 成長

現在の状況は諸刃の剣といえます。米国経済が予想以上に好調である一方、インフレも予想以上に悪化しているためです。ではどちらがより重要なのでしょうか。目下、FRBがインフレ抑制にいかに心血を注いでいるかをみれば、インフレデータの方がより重要であるように思われます。2月2日時点で、金利低下の期待から、金利に非常に敏感なテクノロジー株に牽引され、S&P500種指数が年初来で8%以上上昇したのもこれを示唆しています6 。その後、市場がFRBのよりタカ派的なスタンスを予想するようになったことから、同指数はその上昇分の多くを失いました。

似た状況は欧州でも

この現象は米国に限ったことではありません。ユーロ圏でも同様の状況が見られており、経済は予想以上に力強い一方で、インフレも持続的な様相を呈しています。

  • 2月のユーロ圏総合PMI速報値は52.3と拡大領域に入り、9カ月ぶりの高水準となりました。部門別でみると、製造業PMIは50.4と9カ月ぶりの高水準となり、同サービス業PMIは53.0と8カ月ぶりの高水準で、ともに拡大基調となりました7
  • 1月のユーロ圏CPI上昇率は、12月の前年同月比9.2%から同8.6%に低下しましたが、コアCPI上昇率は12月の前年同月比5.2%から同5.3%に加速しており、欧州中央銀行(ECB)にとって懸念要因となりそうです8 。ナーゲル・ドイツ連銀総裁は先週、「早すぎる段階で手を緩めるのは重大な誤りだ」との見解を示しました9

直近のデータをどうみるか

では、私たちはこれらのデータをどう解釈すればよいでしょうか。私は、これは欧米の寒冷地が異例の暖冬となったことにより、消費や物価が押し上げられた結果の短期的な現象とみています。これらの経済圏において金融引き締め政策の影響がラグをもって表れるにつれ、経済成長と物価の両方に下押し圧力がかかると思われます。とはいえ、成長率やインフレ率が直ちに低下するというわけではありません。私は、これらが緩和基調となっていくペースはより緩慢かもしれないものの、最終的には好ましい方向へ向かうと期待しています。

明るい兆し?

米10年国債利回りはここ数週間で4.00%まで急上昇し、上で指摘したように株価への下押し圧力となっています10 。しかし、同利回りの上昇には明るい兆しも見えるかもしれません。

私の同僚アナリストは、米10年国債利回りの上昇分の3分の2以上が、「実質」利回り、つまり米財務省インフレ保護証券利回りに代表されるインフレ調整後の利回りに起因する(インフレ連動債(TIPS)利回りは、2月上旬の1.15%から先週は1.58%まで上昇)と指摘しています11 。彼によれば、米10年債利回りの上昇は、インフレにまつわる懸念というより、景気循環に関する楽観的な見方によるところが大きいのではないかとのことです。

結論

つまり市場は現在、追加利上げとさらなる金融環境の引き締めを織り込んでいる途中であり、それはもちろん、短期的にこれまでの上昇分の返上につながる可能性があります。しかし私は実際の引き締めが、1月時点での予想を大幅に上回ることはないだろうと考えています。最終的にはインフレは低下し、FRBは引き締めサイクルを終了し、リスク資産のリターン改善を呼び込むと予想しています。

しかし、そこに至るまでに今後数カ月は紆余曲折が予想され、市場では低リスク資産の方が良好なパフォーマンスを示す可能性があります。しかし、この数週間で市場のセンチメントが急速に変化したように、再び変化が表れる可能性があることを心に留めておいてください。それが、データに基づく世の常です。気を引き締めて分散投資を続けましょう。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

1.出所:米商務省経済分析局、2023年2月24日
2.出所:ブルームバーグ、2023年2月24日
3.出所:S&Pグローバルマーキット、2023年2月21日
4.出所:シカゴ連邦銀行、2023年2月23日
5.出所:マーケットウオッチ、“Fed’s Bullard: Markets have overpriced a recession”、2023年2月22日
6.出所:ブルームバーグ、2023年1月1日、2月2日
7.出所:S&Pグローバルマーキット、2023年2月21日
8.出所:ユーロスタット、2023年2月24日
9.出所:ブルームバーグニュース、“Euro-Area Core Inflation’s Refusal to Slow Set to Worry ECB”、2023年2月24日
10.出所:ブルームバーグ
11.出所:Refinitiv Datastream、2023年2月24日

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