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回収したCO2が飛行機の燃料になる!? 実用化目前の「CCUS」とは?

CO2(二酸化炭素)の削減は世界的に重要な課題です。世界125ヵ国・1地域 が、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げていますが、それを達成するためにはより積極的な取り組みが必要です。

取り組みのひとつとして、CO2を回収・貯留・有効利用する技術「CCUS(arbon Dioxide Capture, Utilization And Storage)」の研究・開発が加速しています。

化石燃料利用と脱炭素を両立するための技術「CCUS」とは?

世界中で石炭の使用量を削減する動きが加速しているものの、2019年は依然として世界のCO2排出量の約3分の1が石炭火力発電 によるものだったことなどが、国際エネルギー機関(IEA)の調査から明らかになっています。国際エネルギー機関は「2050年になっても石炭火力発電の6割が稼働している可能性がある」と指摘しています。

そのような中、以下の2つの技術の総称である「CCUS」が、化石燃料利用と脱炭素を両立するための技術として注目されています。

1)CCS(Carbon Dioxide Capture And Storage)
CCSは化石燃料やバイオマスを燃料として使用する発電所や化学プラント、製油所、産業施設などから排出されたCO2や大気中から取り出したCO2を地中深くに貯留する技術です。

2)CCU(Carbon Capture And Utilisation)
CCUは、分離あるいは貯留したCO2を燃料や化学物質の生産などに有効利用するための技術です。

米国 においては、原油の回収率を上げるための技術「EOR(Enhanced Oil Recovery/原油増進回収)」のひとつとして、すでに商用利用されています。原油は地層(貯留層)が自噴することで生産されますが、 地下にはまだ7割以上の原油が眠っているといわれています。そこで回収したCO2を古い油田に注入し、その圧力で油田に残っている原油を押し出すことで、増産につなげるという仕組みです。

世界中で加速するCCUSプロジェクト

CCUSに必要な分離回収や輸送、貯留(圧入)、モニタリング、再利用といった技術は、すでに一部の産業で実用化されています。しかし技術面やインフラ、効率的なエコシステムの構築など、広範囲な実用化に向けては多くの課題が残されています。

石油業界の国際フォーラム「インターナショナル・アソシエーション・オブ・オイル・アンド・ガス・プロデューサーズ(IOGP)」が2021年に発表した報告書「 グローバルCCUSプロジェクト」によると、北米(36件)、欧州(30件)、アジア太平洋(27件)など世界中で、100件以上のCCUSプロジェクトが実施あるいは計画されています。

この中には、中国3大国有石油企業のシノペック(SINOPEC)のプロジェクトも含まれています。このプロジェクトは 、斉魯石化製油所から年間最大1トンのCO2を回収・輸送し、中国中央部のオルドス盆地で石油増産に使用するというものです。

日本においても2012年から、北海道・苫小牧 でCCSの実証実験が国家プロジェクトとして実施されています。また、酸素吹石炭ガス化複合発電技術を開発する大崎クールジェンは、中国電力株式会社と共同で石炭ガス化・CO2分離回収技術「大崎クールジェンプロジェクト」に取り組んでいます。

廃棄CO2から作るクリーン航空燃料「eフューエル」

航空輸送行動グループ(ATAG) のデータによると、2019年に世界の航空産業が排出したCO2は9億1,500万トンです。これは、全運輸産業におけるCO2排出量の約12%にあたります。

2022年2月、ポルトガル廃棄物リサイクル公社リポール(LIPOR) 、フランスの大手容器包装世界ヴェオリア(Veolia)、欧州グリーン水素生成ベンチャーP2X ヨーロッパの3社は、この問題の解決策として廃棄物焼却熱回収プラント「マイア廃棄物発電所」から回収したCO2とグリーン水素を組み合わせ、航空業界向けのグリーン合成燃料「eフューエル(Fuel)」を製造するという共同実証プロジェクトを発表しました。

第1フェーズでは、最大10万トンのCO2を回収して「eフューエル」に変換し、「eケロシン(Kerosene/灯油)」や「eディーゼル(Diesel/重油)」といった特殊化学製品の製造を目指しています。

リポールのホセ・マヌエル・リベイロ社長は、CCUテクノロジーを既存の廃棄物発電所に統合することによって「ほぼゼロ、またはマイナスのCO2排出電力を生成することができる」「都市ごみ焼却の環境とエネルギーのバランスが改善される可能性がある」と期待を寄せています。

今後の成長産業としても注目

このように、CCUSへの取り組みは広範囲な実用化まであと一歩のところまで進んでいます。CCUS技術やインフラが確立されれば、多様な領域におけるCO2排出量削減に貢献するでしょう。

CCUSへの年間投資 はクリーンエネルギーや効率化技術への投資の0.5%未満であるため、今後の成長産業としても注目すべきでしょう。Wealth Roadでは、引き続きCCUSの最新動向とポテンシャルをレポートします。

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