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2022年の金融市場への投資

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〔要旨〕

2022年についての10の予想:オミクロン変異株により、2022年前半にかけて新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)が落ち着く可能性も

2022年の投資計画:投資方針書を作成または再検討し、2022年以降の目標に反映させるタイミングが到来

2021年の金融市場

2021年は、新型コロナワクチンの進展、金融・財政刺激策などに支えられ、先進国株式や不動産投資信託、コモディティを中心に上昇。一方で、インフレ圧力が重要な課題に

2022年における10の市場予測

①新興国市場株式のアウトパフォーム、②地政学上の危機の発生、③FRBの金融政策の正常化を受けた株式市場や債券市場の調整―などを予想

2022年の投資計画

①投資方針書の作成・見直し、②分散投資の継続、③ポートフォリオのリバランス、④現金の保有―が重要

2021年はさまざまな出来事がありました。2021年は、ワクチンの急速な発展を受けて大きな希望とともに始まり、そしてその希望は実現しました。金融刺激策、財政刺激策、およびワクチンの効果的な普及などの強大な原動力が世界の株式、特に先進国市場の株式を押し上げました。また、2021年の世界の企業収益の伸びは力強いものでした。

一方で、インフレは2021年における重要な課題となりました。経済再開により、ペントアップ需要と家計貯蓄の増加にけん引され、支出水準が上昇しました。また、新型コロナウイルスの流行の継続によりサプライチェーンは混乱し、インフレの問題が悪化しました。しかし、ほとんどの場合、市場はこれを観察するだけにとどめているようでした。

2021年の金融市場

2021年は、新型コロナワクチンの進展、金融・財政刺激策などに支えられ、先進国株式や不動産投資信託、コモディティを中心に上昇。一方で、インフレ圧力が重要な課題に

株式:
世界の株式は年間で2ケタの上昇を記録しました 1 。国・地域別では、米国株式は世界の株式を上回りました 2 。新興国市場の株式は、中国株式の弱さなどを要因に、相対的に弱いリターンとなりました 3 。香港ハンセン指数は、中国の「共同富裕(皆が共に豊かになる)」の実現を目的とした一連の規制措置によって株式の売りがもたらされたため、最もパフォーマンスが悪化しました 4

債券:
コア債券のリターンは、ハイイールド債や転換社債などの非コア債券を下回りました 5

オルタナティブ資産:
不動産投資信託(REIT)とコモディティは好調に推移しました 6 。コモディティでは、金と銀が下落する一方で、エネルギーと貴金属が大幅に上昇しました 6

2022年における10の市場予測

感染力が非常に強いオミクロン変異株は短期的にはマイナスの影響が強いと懸念されるものの、2022年前半にはパンデミックの行く末が変化する可能性も

私は2022年に以下の10の展開を予想します。

①新興国市場株式のアウトパフォーム、②地政学上の危機の発生、③FRBの金融政策の正常化を受けた株式市場や債券市場の調整―などを予想

1. 新型コロナウイルスの変異株オミクロンは、短期的には負の影響をもたらし、サプライチェーンがさらに混乱し、インフレ圧力が強まると見込まれます。しかし、オミクロン変異株がこれまで見られたように毒性が弱いままであれば、数カ月以内に前向きな影響をもたらす可能性があります。オミクロン変異株は非常に感染力が強く、より毒性の強いデルタ変異体から置き換わっているようです。私は疫学者ではありませんが、オミクロン変異株が各国に急速に広がり、「事実上の」免疫装置として(どのワクチン接種プログラムよりもはるかに速く)機能する可能性があります。これにより、2022年前半までにパンデミックが収束するかもしれません。

2. オミクロン変種株の広がりを考えると、2022年の新興国市場の株式は、非常に不安定なスタートを切ると予想しています。ただし、通年では、新興国市場の株式は、米国株式を含む先進国株式を上回る可能性が高いと考えます。米国と欧州の経済成長がより正常な水準に落ち着く一方で、新興国市場の成長は加速するとみています。また、2021年とは異なり、金融・財政刺激策による中国経済の成長の再加速から、中国株式が新興国市場の株式のパフォーマンスを後押しする可能性があります。

3. 私は、2022年に重大な地政学上の危機が少なくとも1つ発生すると予想しています(ロシアによるウクライナ侵攻が最も可能性が高いと考えます)が、市場はその発生後、数日以内に織り込むと考えます。近年、市場に長い間影響を及ぼしたのは貿易問題のみでしたが、それでも実際には比較的短期間のものでした。

4. 米国株式市場は、2022年前半に調整すると予想されますが、私は、比較的短期間に反発するとみています。過去に大幅な株価の調整が生じてからかなりの時間が経過しましたから、それが起きる可能性は高まっています。米連邦準備理事会(FRB)が2022年前半に金融政策を正常化し始め、利上げを開始する可能性があるという事実がその可能性を高めています。

5. FRBが金融政策を正常化し始めるにつれて、世界の株式や債券市場の価格変動性(ボラティリティ)は高まるはずです。しかし、私は、市場が現在予想しているほどFRBが引き締めを実施しないことで、前向きなサプライズがもたらされる可能性があると考えます。

6. 私は、FRBが2022年3月に利上げを実施しないと考えます。特に、オミクロン変異株の広がりを考えると、利上げは時期尚早でしょう。一方で、FRBは、バランスシートの縮小の開始を強く望んでいるようです。

7. 私は、オミクロン株の感染拡大からの回復を見越して、2022年の初めに米国ではシクリカル株がディフェンシブ株や長期のグロース株を上回るものの、通年ではグロース株がアウトパフォームすると予想しています。

8. 特にオミクロン変異株の広がりや、サプライチェーンと労働市場への潜在的な影響を考えると、米国のインフレ圧力はさらに強まる可能性がありますが、2022年半ばまでにはピークに達し、その後ゆっくりと低下するとみています。

9. 私は、FRBが金融政策の正常化を開始するにつれ、米10年国債利回りは現在よりも高い水準で2022年を終了すると予想しています。

10. 最後に、米国、欧州、中国で電気自動車の採用が劇的に加速することもあり、2022年には、環境、社会、ガバナンス(ESG)投資への関心がさらに高まると予想しています。

2022年の投資計画

2022年に考慮すべき4つの投資計画は次のとおりです。

①投資方針書の作成・見直し、②分散投資の継続、③ポートフォリオのリバランス、④現金の保有―が重要

1. あなたの投資方針書を重要な指針にしましょう。一部の人は、実際に投資方針書を作成することから始めることになるでしょう。それ以外の方々は、投資方針書が自身の目標と現在のニーズを満たしているか、年初に再度確認するかもしれません(たとえば、大学は、学生の学資援助の必要性が増加したことに対応するため、支出にかかる年間金額を基金の4%から5%に修正する必要がある可能性があります)。いずれにせよ、重要なのは、市場のイベントに対応する中で投資方針を見直すのではなく、「真空」で見直すことです。そうすることで、意思決定から感情を取り除くことができます。結局のところ、世界金融危機とパンデミックの影響を最も受けた投資家のうち、幾人かは株価が下落し始めたときに市場から撤退しましたが、大きなリバウンドを逃しただけでした。投資方針書は、機関投資家と個人投資家が自らの方針を維持し、長期的な目標に集中するのに役立ちます。

2. 十分な分散を保ちましょう。多くの投資家にとって、株式や債券に投資するだけでは十分ではなく、オルタナティブ資産への投資の潜在的な利点を除外しています。そして、3つの主要な資産クラスすべての中で、十分に分散をすることが重要です。たとえば、株式と債券の資産クラスにおいて、多くの投資家は新興国市場へのエクスポージャーが不足しており、投資を増やすことで利益を得る可能性があります。

3. ポートフォリオをリバランスしましょう。少なくとも年に一度は、リバランスすることをお勧めします。そうすることで、利益を得ることができ、自身の投資方針書の範囲内にいることができます。

4. ある程度の現金を保有してください。これにより、株式市場が大幅に下落したときに投資する「余裕資金」が得られます。株式市場が調整する場合はドルコスト平均法による投資を行うことをお勧めしますが、最近の下落は非常に短命であり、ドルコスト平均法を行う時間はあまりないかもしれません。

新年の抱負

残念なことに、2021年末に、100歳の誕生日をわずか数週間前にして、著名なコメディエンヌであるベティ・ホワイトが亡くなりました。しかし、私たちは彼女の人生から多くを学ぶことができます。私たちは1つ年齢を重ねて1年を終えますが、ベティが指摘したように、年齢を重ねるとともにすべてが良くなっていきます。2022年が、喜びに満ちた、より賢く、より良い年になりますように。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

1. 出所:MSCI。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(米ドルベース)は2021年に17.04%上昇。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは、先進国と新興国の大型株や中型株で構成される株価指数。
2. 出所:S&P、MSCI。S&P500種指数とMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(米国を除く)を比較。S&P500種指数は、米国の代表的な株価指数。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(米国を除く)は、米国を除く先進国と新興国の大型株や中型株で構成される株価指数。
3. 出所:MSCI。MSCIエマージング・マーケット・インデックスは2021年に5.68%下落した一方、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(中国を除く)は7.01%上昇。MSCIエマージング・マーケット・インデックスは、新興国26カ国の大型株や中型株で構成される株価指数。
4. 香港ハンセン指数は、香港証券取引所に上場する代表的な銘柄で構成される株価指数。
5. コア債券は、世界の投資適格債や固定金利の社債の代表的な債券指数であるブルームバーグ・グローバル・アグリゲート・コーポレート・インデックス。転換社債は、ブルームバーグ・グローバル・コンバーチブル・インデックス。ハイイールド債は、ブルームバーグ米国ハイイールド社債インデックスとブルームバーグ欧州ハイイールド社債インデックス。
6. 出所:S&P。先進国および新興国市場に上場しているREITの広範なベンチマークであるS&PグローバルREITインデックスと、世界のコモディティ市場全体の動きを表す商品指数であるS&P GSCIインデックスを元に算出。

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