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不安定な秋への備え

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米国大統領選での選挙無効の申し立て、新型ウイルスの感染率の上昇、米国の景気刺激策成立の不透明感

〔要旨〕

●①間近に迫る米大統領選挙、②欧米の新型コロナウイルスの感染率上昇、③米景気刺激策成立の見通し―について考察
●今秋は投資家の長期投資への決意が試される時期となるだろう

米大統領選挙を無効とする訴えの可能性はあるか?
多数の郵便投票は投票日以降の集計が必要なことから、大統領選の結果の判明が遅れる可能性が高まっている

新型コロナウイルスの感染者の増加傾向は続くだろうか?
欧米では新型ウイルスの感染者数が大きく上昇

2020年内に景気刺激策は議会を通過するだろうか?
大統領選挙前の景気刺激策の成立の可能性は大きく低下

投資家の不安を和らげる6つのヒント
衝動的な売り買いを避けるための6つのヒントを紹介

①間近に迫る米大統領選挙、②欧米の新型コロナウイルスの感染率上昇、③米景気刺激策成立の見通し―について考察

私は子どもを持ちながら働いていますが、幸運なことに、多くの友人に恵まれています。私の友人には、幼少期から高校時代からの友人もいれば、子どもの学校で出会ったお母さん、職場で出会った友人もいます。子育てや日常生活で困ったことがあると、友人たちとお互いに助けあって今までやってきました。私と友人らは、ストレスが溜まる教師との親子面談など、胃腸の調子が悪くなる時期を「胃腸薬が必要な日々」と冗談で呼んでいました。

さて、差し迫った米国大統領選挙、2020年の追加の米国景気刺激策成立の可能性の低下、そして世界で見られる新型コロナウイルスの感染率の上昇を考えると、胃腸薬が必要な日々が近づいていると思われます。

米大統領選挙を無効とする訴えの可能性はあるか?

記録的な数の有権者がすでに投票を完了

まず、米国大統領選挙から見てみましょう。大統領候補者による3回目の討論会が前週行われ、そして記録的な数の米国人がすでに投票を終えています。フロリダ大学のマクドナルド教授によると、10月25日時点ですでに約5,900万人が投票を終えています。そのうち、約3,980万人が郵送投票、約1,920万人が期日前投票となっており、有権者の内訳は、49.1%が民主党支持者、27.9%が共和党支持者、0.6%が(緑の党などの)それ以外の党、22.4%が無党派です 1

大多数の郵便投票から、大統領選の結果の判明が送れる可能性がますます高まる

この5,900万票は、2016年の大統領選挙の総投票数の42.8%に相当しており、今回の選挙は有権者の投票率が記録的に高くなると見込まれます 1 。そして、全米の支持率ではバイデン氏の大きなリードが続いていますが、一般投票ではなく選挙人団が大統領を選ぶ仕組みの上でより重要な州では、両者は接戦しています。また、たくさんの人が郵送で投票しており、勝敗の鍵を握る多くの州が選挙日までそれらを開票しないことを考えると、選挙当日の夜に勝者が決定しない可能性がますます高まっています。さらに問題なことには、選挙無効の訴えが出される可能性も高まっていると考えます。それは、投資家の胃腸の調子を悪くさせるシナリオです。

新型コロナウイルスの感染者の増加傾向は続くだろうか?

欧米では新型ウイルスの感染者数が大きく上昇

次に、多くの欧米諸国で新型コロナウイルスの感染率が上昇しています。欧州の第2波は、第1波よりもはるかに大きく、フランスは25日時点で新規感染者が5万2,000人を超え、過去最多となりました 2 。イタリアと英国でも感染拡大の抑制に苦戦しており、部分的な都市封鎖(ロックダウン)が実施されています。スペインなどの他の国でも感染が拡大しています 2 。米国では、10月24日時点の新規感染者が7万8,702人、少なくとも871人が新型コロナウイルスで死亡したと報告されています 3 。過去1週間の1日当たりの新規感染者数の平均は6万8,127人で、わずか2週間前から32%増加しました 3

政府高官による新型ウイルスの感染拡大をコントロールするつもりはないとの発表から、米国人の不安感はさらに増大

米国は欧州と同様の軌跡をたどっているようにみえます。つまり、11月と12月の米国の状況はますます悪化する恐れがあり、欧州ですでに行われている部分的なロックダウンの可能性が懸念されます。そして週末、メドウズ米大統領首席補佐官が「トランプ政権は新型コロナウイルスの感染拡大をコントロールするつもりはない」と述べ、これは代わりに治療とワクチンに集中するという意味ではありますが、人々の不安感はさらに高まりました 4 。専門家は、有効なワクチンの供給は来年夏頃になるだろうと予想しています。これは、米国がこの先数カ月の間、困難を迎えることを意味しており、投資家の胃痛の種を増やすことになるでしょう。

2020年内に景気刺激策は議会を通過するだろうか?

大統領選挙前の景気刺激策の成立の可能性は大きく低下

最後に、2020年内に追加の米景気刺激策が成立する可能性が薄れています。私は、トランプ大統領の再選への切望から、11月3日の選挙前に景気刺激策が議会を通過すると楽観的に考えていました。しかし、現在、再び新型コロナウイルスの感染が拡大し、これまで以上に財政出動が求められているにもかかわらず、議会通過の可能性は非常に低いと考えています。

FRBメンバーは財政刺激策の欠如による景気後退リスクを再三にわたり警告

過去数週間、米連邦準備理事会(FRB)は議会に刺激策を通過させるように促していました。ミネアポリス連邦準備銀行のカシュカリ総裁は、最近、失業中の米国人と困難に直面している企業がさらなる支援を受けない限り、米国景気は減速し、そして、追加の財政出動がなければさらに数千の企業が倒産するだろうとの懸念を表明しました。カシュカリ総裁は、請求書の支払いに苦労している失業中の消費者が、米国経済に与える悪影響を懸念しました。そして「請求書を支払うことができない場合、追加の量的緩和は長期失業保険の代わりにはならない。 …議会だけが、中小企業や職を失い真の困難に直面している米国人に直接的な財政援助を与えることができる 5 」として、金融刺激策は財政刺激策に代わるものではないという見解を示しました。この発言の1週間前に、カシュカリ総裁は、追加対策がなければ「甚大な結果」をもたらすだろうとして、警鐘を鳴らしていました 6 。FRBのパウエルFRB議長も、10月初めに、何の対策も取られない場合、「最悪な結果」となる可能性があると発言し、追加の政府支援の必要性について再び警告しています 7

米国経済の悪化や企業業績の差が鮮明になると懸念される

今後数カ月に景気刺激策が実施されない場合、経済全体に悪影響が及び、セクター間での業績差が鮮明になるなど、経済の回復における二極化がますます拡大することとなり、投資家は胃潰瘍で苦しむことさえもありえるでしょう。

投資家の不安を和らげる6つのヒント

衝動的な売り買いを避ける6つのヒント

以上から、今秋、投資家は「胃腸薬が必要な日々」を過ごし、何らかの恐れから衝動的な投資の意思決定をしてしまう可能性があると考えます。そうならないよう、私は今後数週間、皆さんの不安を和らげるためのいくつかのコツを提示したいと思います:

1.市場のボラティリティは高いものと考えておきましょう。

私たちを取り巻く潜在的な不確実性は、大きなボラティリティと株価の下落をもたらす可能性があります。ただし、それが起こりうることを念頭に置いておけば、それに苦しめられることは少なくなります。

2.悪いニュースにも、必ず良い側面があることを忘れないでください。

11月3日の夜に次期大統領が決まっていなかったとしても、翌週もしくは数週間以内には私たちはそれを知ることになるのです。そして、1月には所信表明演説が大統領により必ず行われます。また、財政刺激策はいつ行われるかだけの問題です。仮に2020年中に実施されなかったとしても、2021年初頭には大きな財政刺激策が実施されるでしょう。新型コロナウイルスの感染者数は増加傾向にありますが、重篤な疾患や死亡者数は今春に比べて格段に減少しています。前週、米食品医薬品局(FDA)局長のスコット・ゴットリーブ氏は、新型コロナウイルスによる入院患者の死亡率が急激に低下したことを示す、2つの新たな臨床結果を発表しました。高齢患者や基礎疾患を有する患者を含めた全てのグループでこの低下が見られており、この疾患の治療は大いに進歩しています 8

3.パニックに陥り、ポートフォリオを大きく変更するべきではありません。

私の見解では、選挙に起因する一連のボラティリティは各資産クラスに一時的な影響をもたらすだけです。常に長期的な目標に集中し、皆さんの意思決定が自身のゴールと一致するように投資アドバイザーと話し合うことが重要です。

4.未来を見ましょう。

不確実性や苦しみは、新たなチャンスを生み出すものです。欧米の多くの国はパンデミックを抑制することに苦労しているかもしれませんが、韓国、中国、日本などの国々はウイルスの抑制に成功しています。そしてこのような国々は、より多くの外国投資を呼び込み、自国のサプライチェーンを拡大することに成功するでしょう。新型ウイルスは私たちが生涯に経験する最後のパンデミックではないと思われ、今回の苦難は将来の危機に対処するよき経験となっているのです。

5.何が重要かをよく覚えておいてください。

私の見解では、金融政策が市場に対して最も重要です。私が機関投資家向けに行った最近のロードショーでは、近い将来において何が市場価格に最も影響を与えると考えているかについて、投資家へ非公式にヒアリングしました。選択肢は、財政政策、金融政策、大統領選挙、新型コロナウイルスでしたが、驚くべきことに、新型コロナウイルスと答えた投資家が最も多くなりました。私はこの見解には賛成しません。株価は新型コロナウイルスの感染拡大により2020年2月と3月に大幅に下落しましたが、FRBが3月に強力な金融政策を発動した直後から、上昇を始めています。FRBの行動は株価を動かす大きな原動力なのです。私の見解では、FRBのメンバーは、ホワイトハウスのメンバーよりもはるかに重要です。

6.リラックスしてください。

胃腸薬の代わりにワインを試してみてください。今までも、パンデミック、重要な選挙、財政政策の物足りなさがありましたが、株式市場は上昇を続けてきました。

今秋は投資家の長期投資への決意が試される時期

私はずっと前に、世の中には自分ではコントロールできないことがたくさんあることを知りました。私たちにできることは、それらに対する自分自身の反応をコントロールすることだけです。子育て中に「胃腸薬」が必要な時期はありますし、教師との面会から逃げることは長期的に事態を悪化させるだけです。私は友人のアドバイスを得ながら、それらを乗り越えてきました。今後数週間、投資家は消化不良を起こすかもしれませんが、あなたの信頼できるファイナンシャル・アドバイザーは、あなたが長期的な目標に集中し、ポートフォリオの意思決定があなたの目標(あなたの恐怖ではなく)に合致している手助けをしてくれるでしょう。そしてあなたと一緒に未来を見据えてくれることでしょう。

1.出所:U.S. Elections Project、“2020 General Election Early Vote Statistics”、2020年10月25日。
2.出所:ウォール・ストリート・ジャーナル、“Europe Imposes New Covid-19 Restrictions as Second Wave Accelerates”、2020年10月25日。
3.出所:ニューヨーク・タイムズ、“Covid in the U.S.: Latest Map and Case Count,”、2020年10月25日。
4.出所:CNN、“White House chief of staff: ‘We are not going to control the pandemic’”、2020年10月25日。
5.出所:ロイター、“Fed’s Kashkari: Recovery will be grinding and slow without more stimulus”、2020年10月15日。
6.出所:ビジネスインサイダー、“Fed’s Kashkari warns of ‘enormous consequences’ if fiscal stimulus is not approved — and says there are no ‘moral hazards’ to supporting more aid”、2020年10月7日。
7.出所:ニューヨーク・タイムズ、“Trump Abruptly Ends Stimulus Talks After Fed Chair Urges Economic Support”、2020年10月6日。
8.出所:ツイッター。

 

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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