資産運用に悩みはつきものです。とはいえ、保有する資産額によって、生じる悩みは異なります。運用初期の頃は、どう増やしていくか、自分にあった運用を探るのがメインテーマとなりますね。資産が増えるにつれ、どう使うか、資産とどう向き合っていくかという大局的なテーマに移っていきます。
今回は、〜1,000万円、1,000万円〜5,000万円、5,000万円〜1億円、1億円以上の4ステージに分けて、それぞれのステージにおいて起こりやすい悩みや、その対処方法をご紹介します。
目次
〜1,000万円 --スタート期--
資産が〜1,000万円までの時期は、これから投資を始めるタイミングの方や、投資経験の浅い方が多いでしょう。投資の始め方に迷ってなかなかスタートを切れない、あるいは、始めたは良いもののリスクへの不安を抱えながら運用している方が多いです。また、運用額が少額ゆえに、成長性を懸念することもあるでしょう。
解決策①:まずは生活防衛資金を確保する
リスク資産の運用には、日々の価格変動がつきものです。リスクと上手に付き合うために、まずは半年程度の生活防衛資金の確保を優先しましょう。株価が下落しても日々の生活に困らない資金を確保することで、長期的な運用を続けることができますね。また、余裕資金が手元に残っていれば、相場の調整時に買い向かうことも可能です。
解決策②:非課税制度で王道の積立投資を習慣に
投資を行う際には、税効率の良い制度を優先的に利用するのが良いですね。NISAやiDeCoで積立投資をするのがセオリーです。積立投資をすることで、相場の変動に動じることなく、継続的な運用を続ける習慣が身につきますね。
運用商品や手法は、あれこれ迷いがちで、色々なモノに手を出したくなるものです。しかし、まずはインデックス中心の王道路線をコアに据えるのが良いでしょう。長期的にはプラスになるというストーリーが描きやすく、株価下落時も淡々と続けることができますね。
リスクに慣れ、精神的な土台を作る心構えで
資産額が少なく、焦ってしまうかもしれません。しかし、運用資産が少額のうちは、失敗してもやり直しがきくため、経験として活かすことができるという側面もあります。
このステージは、長期的な運用を達成するための精神的な成長、リスクへの慣れを育てる期間と言えるでしょう。株価下落時も航路を守り、着実に資産を積み上げていくことが肝要ですね。
最近は若いうちから投資に取り組む方が多いです。もし20代で1000万を突破したならば、将来的には1億を超える資質があると思ってよいでしょう。
1,000万円〜5,000万円 --成長期--
1,000万円〜5,000万円のステージでは、多くの方はリスク資産との付き合い方に慣れてくるころですね。この頃は、現金とリスク資産のバランスに悩んだり、投資商品の分散の必要性を意識したりすることが多いです。
解決策:現金比率を調整し、コア・サテライト戦略を意識する
現金比率は年齢や心の余裕を保てる比率で個々に調整するのが基本です。ライフステージも多様化する頃です。目安としては20%〜30%が基本となります。家庭状況や家計の収支に応じて調整しても良いでしょう。
投資アセットの分散は、あえて手広くする必要はありません。ただし、インデックス投資をコアにしつつ、関心が高ければアクティブ投信や個別株と取り入れても良いでしょう。
5,000万円〜1億円 --管理・分散期--
資産が5,000万円を超えてくると、資産の管理に意識を向けたくなります。株式一辺倒で良いのか悩みだす時期ですね。日々の変動で動く額も大きくなるため、株式だけの運用だとボラが激しくなりがちです。
解決策:基本航路は守りつつ、株式以外の収益源も検討する
とはいえ、今の時代を踏まえると株式インデックス投資を中心とした積立投資を継続するのが良いでしょう。
ライフプランによっては、ハードアセットも視野に入ってくるでしょう。私の友人でも、資金的に余裕が出るこのころから、初期コストを抑えて民泊などの副業を始める人がいます。市場の変化と違う収益構造であるため、安定的な資産運用に一役買ってくれることでしょう。
ブレない軸を持ち、インフレや流動性を意識する心構えで
この時期は、“航路を守る”が揺らぎやすい時期ですので、しっかりとブレない軸を持つことが大事です。現金比率の上昇や生活防衛資金の再確認を行うと良いでしょう。インフレ耐性や流動性を意識しながら、リスク資産を運用することですね。
年によっては、給与を上回る収入が生じることもあるのがこのフェーズです。
1億円以上 --富裕層・自立期--
資産が1億円を超えると、いわゆる富裕層と呼ばれるステージに突入します。実際に実現してみると、これぐらいだと富裕さはさほど実感しないと思いますが、画面で日々動く数字は大きく感じることでしょう。
一昔前は実現するのが難しい数字でしたが、インフレが進んでいることもあり、50代前後でコツコツ投資を続けてきた人の、少なくない人数が達成している資産額です。今は時代が良いので、もっと若くして達成する人が続出しても不思議ではありません。
とはいえ、メディアなどで報じる平均資産額などとは乖離していますので、世間的にはやはりレアな存在となります。投資をする人と、しない人の差はこのようにどんどん開いていきます。
一方で無邪気に資産額を愛でるようなフェーズでもないので、運用方法の迷いだけでなく、資産拡大の必要性との葛藤や、お金をどう使うかということに意識がシフトしていくことが多いです。また、FIREも可能な規模ですので、どう働くか、いつまで働くかといった悩みも大きくなりがちですね。
ただし、選択の自由というのはとても贅沢な悩みではあります。
解決策:自分にとっての「十分」を知り、新たな選択肢を検討する
資産拡大は追求しだすとキリがありません。家族や自分自身の価値観を再確認し、必要な額を決めるのが良いでしょう。
1億を超えてくると、レバレッジを活かした不動産投資や起業、法人化などの新たなアプローチも検討の余地がありますね。所有資産を信用としてレバレッジを効かせたり、効率的な運用のために法人化したりというのが最適となるケースが考えられます。
収穫期を迎え、次の生き方を選ぶフェーズ
場合によっては、FIREも十分可能な範囲です。生活水準と幸福度のバランスを見極めつつ、自分自身で決断することが求められますね。いわば、投資という種まきが実を結び、収穫の時期となっているわけです。さらに拡大するか、それとも享受するか、そういうフェーズです。
2億、3億、4億と投資を進め、さらにこれ以上の額となると、働いて稼いだ収入よりも資産の上がりからの収入のほうが多い、つまりフローを使いきれない運用額となります。相続するのか、それとも一代でゼロに戻すのか。
私は考えあって相続していくつもりですが、資本主義の深淵とも言える世界かもしれませんね。
投資は人生を豊かにするための道具
資産が増えるにつれて、次第にどう運用するのかという考えから、どう守るか、どう使うかの悩みに移行していきます。他人基準ではなく、自分の価値観に沿った資産形成を心がけるようにしましょう。大切なのは、自分と家族が納得できる生活スタイルを選ぶことですね。
投資や資産形成は人生の目的を叶える道具です。どこで満足し何に時間を使うかを常に考えるようにしましょう。資産ステージごとに悩みは変化しますが、航路を守りつつ自分自身に正直に生きていきたいですね。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。
著者:たぱぞう(資産管理会社経営/投資顧問会社アドバイザー)
2000年より投資を始める。2010年以降、米国株投資を中心に行う。2016年自らの投資観をブログにて書き始める。投資に特化したブログとしては出色のPVを誇る。2017年から2025年春まで、某投資顧問業にてアドバイザーを務める。この間、日経マネー、日経ヴェリタス、ダイヤモンドZAI、ITmediaなどのメディアに複数回取り上げられる。「誰でもできる投資術」「誰でもわかる海外投資」をモットーに執筆中。「米国株を語る会」を開き、投資について語り合う場づくりをしている。
参考ブログなど
投資初心者は、何から始めればいい? 歴20年のたぱぞうさんに聞く「知識ゼロからの投資の始め方
YOUTUBE:【これが現実】金融資産額別の実態をお話します