新型コロナウイルスによる未曾有の大感染が世の中に大きな変化を及ぼしている中で、復興後の私たちの生活は今までと違ったものとなるかもしれません。果たして、どのような「アフター・コロナ」の時代が訪れるのでしょうか。今後のビジネスシーンや日常生活の中で、注目すべきキーワードとは?
コロナが世界経済に及ぼす影響
2019年の年末に、中国の湖北省武漢で原因不明の肺炎患者が数名確認されたというニュースを耳にした時点では、おそらく世界中の数多くの人々がその後の事態を想定していなかったことでしょう。年が明けてから武漢で感染者が急増して都市封鎖に至ったわけですが、その頃はまだ株式市場もさほど派手な反応を示していませんでした。
しかし、日本でも横浜港に来港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」や屋形船、ライブハウスなどでのクラスター(集団感染)が次々と発生。これらの事態を受けて、日経平均株価は2月半ばから下落色が鮮明になっています。
さらに、2月下旬からイタリアでも感染者が爆発的に増え、3月に入ってからは米国にも飛び火していったことから、世界的な株価急落に発展しました。こうして株式市場が過剰な反応を示したのは、全世界規模で経済活動がストップすることを悲観したためです。
4月下旬以降、感染者の拡大がピークアウトした国から徐々に経済活動が再開されていますが、かつてのように世界中の人々が盛んに行き来する状況に戻るのは、もう少し先になりそうです。新型コロナウイルス自体が撲滅されたわけではなく、二次感染を警戒して様々な方面の需要が制約されそうです。
ワクチンや特効薬など、コロナ関連銘柄の人気は短命!?
感染拡大で株式市場全体に動揺が広がり、多くの銘柄が下落する中で逆行高を遂げるものも出てきました。新型コロナウイルスの治療に効果があると期待された薬剤の開発メーカーやマスクメーカー、巣ごもり消費によって需要拡大に結びつきそうな業態などです。
また、ワクチンの開発も進められており、無事成功に結びつけば、特効薬とともに予防と治療の体制が確立します。そうなると、インフルエンザのように季節的な流行を繰り返しながらも局所的な感染拡大を食い止められ、人類とウイルスの共存関係が築かれるかもしれません。
類例のない事態のため、株式市場でも関連銘柄に期待が寄せられるのは当然の現象とも言えるでしょう。しかし、コロナ関連銘柄と位置づけられて早くから注目されてきたものの多くは、感染の収束が顕在化した頃には関心が薄れてしまっている可能性が考えられます。
むしろ、これから株式市場でスポットが当たるようになるのは、「アフター・コロナ」の時代における世の中の変化に対応し、そのニーズに応えるビジネスを展開している分野・業態ではないでしょうか。
中長期的に有望なのは復興関連とDX関連か?
世界的に様々な支援策が打ち出されていますが、経済活動が長期間にわたって停滞したことによって、企業の倒産や失業者の増加は避けられそうにない情勢です。今後も国は必要に応じて、景気刺激策や復興策を打ち出すことでしょう。
特に大きなダメージを受けている観光・運輸業や飲食業、イベント関連、エンターテインメント関連については、官民が一丸となって支援策を繰り広げることが予想されます。こうした分野における需要が「プレ・コロナ」の頃の水準まで直ちに回復するのは難しいでしょうが、国を挙げて復興に力を入れることも確かで、「国策に売りなし」(国策に関わる銘柄は値上がりが期待できる)という相場の格言が想起されます。
一方で、巣ごもりを強いられたことで否応なく導入を迫られたのがテレワークでした。日本ではなかなか進まなかったキャッシュレス化も、日常品購入のeコマースへのシフトや食事の宅配などといった「非接触型」の消費行動が普及を促しつつあります。
このような変化を踏まえて、多くの企業は本気でデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation=DX)に取り組んでいくことになりそうです。DXとは、企業がターゲットとしている市場環境のデジタル化に対応し、ビジネスモデルや組織形態・制度を抜本的に改革する一連の取り組みを意味します。テレワークを糸口に今後はDXと正面から向き合っていくことになり、それに伴って「働き方改革」の進展も期待できます。
「新しい生活様式」に対応するDXに期待
新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の普及など、コロナ後の世の中の動きがビジネスチャンスとなる企業も登場してくるでしょう。今後DXのさらなる推進によって、実際にどのような企業が生活やビジネスを変革させていくのかについて、自分なりに想像力を働かせてみるのも面白そうです。