最近「ガソリンが安いな?」と思った人も多いのではないでしょうか。2020年3月に原油価格が急落しガソリン価格も下落傾向にあります。価格低下は家計的にはメリットですが、単に喜ぶだけでなく世界経済に視野を広げてみましょう。今回は原油価格下落の背景にあるロシアや中東、米国などの動きと経済への影響について解説します。
そもそもモノやサービスの価格を決める要因となるのは需要と供給の関係です。需要が供給を上回れば価格は上がり逆の場合は下がりますが、原油も例外ではありません。新型コロナウイルス拡大に伴う世界的な経済封鎖により、ガソリンやジェット燃料をはじめ石油製品の需要が大幅に減少。原油在庫が急ピッチで積み上がり、いわゆる供給過多の状況です。
この背景には原油の生産(供給)をめぐる国際的な駆け引きも関係しています。価格下落は、2020年3月上旬のサウジアラビアを盟主とするOPEC側とロシアなど非加盟国で作られる「OPECプラス」の減産協議決裂が発端です。サウジ側が追加的減産を求めたのに対して、ロシア側は反対し、原油価格が急落しました。
その後、サウジは原油受給の調整役を降り、逆に増産を打ち出しました。サウジは増産により原油価格を引き下げ、採掘コストの高い米国のシェールオイル生産に打撃を与えようとしたともいわれています。
実際、米国ではシェールオイル企業の倒産が出始め、トランプ大統領は減産の実現へ向け、仲介に乗り出しました。その結果、OPECとOPECプラスは、2020年4月13日には世界全体で日量970万バレルと過去最大レベルで減産することで合意しました。しかし、すでにすべての貯蔵施設は満杯か予約済みとなっており、これ以上の原油の貯蔵場所はありません。
新型コロナウイルスの拡大で経済活動も制限されている状況で、原油安は当面続くと考えられています。
原油輸入国の日本では、原油価格が安いことは「家計にとって助かるだけで世界の動きは関係ない」と考える人は多いかもしれません。しかし、一歩踏み込んで原油安が長期化することによる経済への影響もイメージしてみましょう。例えば、「シェールオイル企業の相次ぐ倒産」→「多額の融資元である米国の金融業界に波及」→「世界的な金融危機」というシナリオも考えられます。
このようなシナリオをイメージできれば自分の投資や貯蓄行動への意識が高まり、自分の財産を守ることにつながるでしょう。今回はガソリン価格を通して原油価格や国際的な駆け引きの事例を説明しました。しかし、ほかにも世界の動きと生活は密接に関係しています。「身近な商品の価格がなぜ高くなったのか(安くなったのか)」を意識しながら世界を見つめ自分のこれからの行動につなげていきましょう。