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目次
先週の世界的な株式パフォーマンス記録更新をもたらしたものとは?
「マグニフィセント・セブン」の決算が市場の熱狂を裏付ける
日本でも「根拠ありの熱狂」が見られる
金融政策が世界的にプラスに働く可能性
今週の見通し
注目の日程
私は、良い意味での記録更新が大好きです。子供の頃、ギネスブックを夢中になって読んだものでした。体操の選手が初めて「10点」満点を取ったとか、そういう偉業にはあまり感銘を受けませんでしたが(私はでんぐり返しもできませんでしたから)、30秒で片足に一番多く靴下を履けた人や、1分間で輪ゴムを一番多く顔に付けられた人などには大いに関心したものです(10歳の自分は、そういう記録は「破れる」と思っていました)。
数週間前、私は娘のバスケットボールチームが、無敗のシーズン達成という学校の歴史に残る記録を達成したことをお祝いしました(私自身が同じ高校のチームでプレーしていた頃、無敗のシーズンとは程遠い成績だったことの埋め合わせになりました)。
そして先週、米国、欧州、日本の主要株価指数が史上最高値を更新し、多くの記録が塗り替えられました。しかしスポーツの記録とは異なり、株式市場の記録には1つの重要な懸念がつきまといます:果たしてそれが、「根拠なき熱狂」なのか?ということです。
私は、そうは思いません―熱狂には根拠がある、と考えています。その理由は以下のとおりです。
2月22日、米国、欧州、日本の主要株価指数が史上最高値を更新しました:
このパフォーマンスをもたらしたものは何でしょうか?世界的な上昇のきっかけとなったのは、エヌビディアという一企業の決算報告でした。これがテクノロジーセクターへの好感を後押しし、主要指数の上昇につながりました。このため、一部のストラテジストや市場ウォッチャーは―25年以上前に当時のグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が生み出した言葉を借りれば―これは「根拠なき熱狂」であり、買われ過ぎの状況と、空前のバリュエーション高騰が起きていると結論づけています。しかし、本当にそうでしょうか?
1つの銘柄のパフォーマンスが、世界中の株価指数を史上最高値に押し上げる最も重要な要因になるとは理解しがたい向きもあるでしょう。しかし、私は古い人間なので、1990年代後半にインターネットの可能性が投資家を刺激したことを覚えています。テクノロジーセクター、特にインターネット関連企業への熱狂が、この時期の米国の主要指数を史上最高値に押し上げました。
しかし当時は、これらの企業を信じる裏付けとなる強力なファンダメンタルズはなく、夢と希望、そして経済の変革の可能性に対する漠然とした感覚があるだけでした。当時、実際に利益を上げているテクノロジー企業はむしろ少なく、株価収益率の比較はそれほど意味がなかったことから、アナリストは株価売上高倍率をより重視していました。今回の事情は、それとは異なります。熱狂と夢を裏付けるファンダメンタルズは実際に存在しています―大躍進の内容となったエヌビディアの決算報告を見れば、一目瞭然です。
米国株式市場は、非常に高いバリュエーションで取引されているとの見方があります。S&P500種指数が平均を上回る株価収益率で取引されているのは事実ですが、その多くは少数の銘柄によってもたらされています2;市場観測筋が、株式市場の「集中度が高い」と表現しているのはそのためです。
良いニュースは―「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる―この少数企業グループの銘柄が、与えられた高い期待に応えていることです。「マグニフィセント・セブン」のここ数四半期の決算報告書は、これらの企業への熱狂に妥当性があることを裏付けています。「マグニフィセント・セブン」全体の業績に鑑みると、これら企業のバリュエーションは、より幅広くみた米国株式市場全般に比べて高くなっていますが、これら企業の今後1年間の利益成長率は、S&P500種指数を構成する残り493銘柄のおよそ5倍と予想されています3。これは「根拠なき熱狂」ではなく、むしろ「根拠ありの熱狂」ではないでしょうか。
日本のケースもまた、「根拠ありの熱狂」となっています。2月22日に日経平均株価が史上最高値を更新しましたが、それまでの最高値は、何と私が大学生だった1989年12月に記録された値でした4。この最高値更新は、最近の非常に力強い株価上昇を背景にしています。
しかし、日本の株価はまだ割高と言える領域にはありません。実際、TOPIX 500 の直近の株価収益率(12ヶ月先)は 16.18倍で、過去15年間の平均である16.58倍を下回っています4。これは、東証の「バブル期」 の株価収益率-1989年に60倍以上に達した―とは比べものになりません4。
堅調な利益成長期待が最近の株高を牽引していることから、私は、投資家は日経平均株価の史上最高値更新を安心して受け止め、潜在的な更なる高値に向けた節目の1つに過ぎないと捉えるべきだと考えています。日本の株価は今後も上昇を続けるでしょう。
私は、複数の主要指数が最高値を更新した理由は他にもあり、それは金融政策に関連していると考えています。比較的軟調な経済データと賃金の伸びの緩和は、そう遠くない将来に欧州中央銀行が利下げを行う可能性に期待を抱かせます。また、日本のインフレ率が軟調に推移していることから、日銀はインフレを抑制するのではなく、むしろより高い水準へ誘導しようとしており、日銀による金融政策の正常化が非常に緩やかな形で開始される可能性が示唆されます。
また米国の金融政策が、世界中の株式に前向きなきっかけを与える可能性も見逃せません。というのも、市場は年後半に始まると見込まれる利下げ幅の縮小を織り込み始めており、FRBへの期待はかなり低くなっているからです。市場はこのような利下げに関する見通しの変化を―米ドルの上昇、米ハイイールド債の米投資適格債に対するアウトパフォームなど―様々な形で伝えています5。
私が自身の家族にまつわる経験から学んだのは、夫や子供たちへのハードルを低く設定するほど、結果的にそれを超える可能性が高くなるということです。だから私は、FRBがタカ派的な発言を続け、その後前向きなサプライズ―今年4-6月期に利下げが開始され、現在の市場予想よりも多くの利下げが行われること―を引き続き期待しています。そうなれば、今年リスク資産は更に良好なパフォーマンスを示すでしょう。
利下げは、実質所得の改善とともに、今年後半の経済成長の再加速を後押しする可能性があります。その結果、株式市場が拡大し、景気回復への期待から、小型株やシクリカル銘柄がより良いパフォーマンスを示す可能性があります。
今週は、個人消費支出(PCE)価格指数の発表を、ハラハラしつつ見守ることとなります。この指標はFRBにとってのインフレ指標であり、現在進行中のディスインフレのトレンドについて更なる確証を得たい米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーに対して、大きなインパクトを与える可能性が高いと考えられます。もしこの指標がコンセンサス予想を大幅に上回ったり下回ったりした場合、FRBの政策をめぐる市場の期待に影響を与えることから、市場はかなり大きく反応すると予想されます。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
(執筆協力:木下智夫、ジェームズ・アナニア)
公表日 | 指標等 | 内容 |
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2月27日 | 米国コンファレンスボード 消費者信頼感 | 米国消費者の動向、支出計画、 インフレ・株価・金利に対する 見通しを月次で調査 |
2月27日 | 米国耐久財受注 | 耐久財の新規発注を追跡 |
2月27日 | ニュージーランド準備銀行 金融政策会合 | 金利の道筋に関する最新の決定を発表 |
2月27日 | ドイツ GfK消費者信頼感 | 一般的な経済環境や家計の財務状況に 対する将来的なな見通しなど、消費者の 様々な動向を測定 |
2月28日 | ユーロ圏消費者信頼感 | 消費者の家計と経済に関する見方を追跡 |
2月28日 | ユーロ圏景況感 | 現在の景況感を月次で評価 |
2月28日 | ユーロ圏消費者インフレ期待 | 将来のインフレに対する消費者期待を測定 |
2月28日 | 米国国内総生産 | 地域の経済活動を測定 |
2月28日 | 日本鉱工業生産 | 鉱工業セクターの健全性を示す |
2月28日 | 日本小売売上高 | 消費需要を測定 |
2月29日 | 英国ネーションワイド住宅 価格指数 | 住宅セクターの健全性を示す |
2月29日 | ドイツCPI | インフレの動向を示す |
2月29日 | 米国PCE価格指数 | インフレの動向を示す |
2月29日 | カナダ国内総生産 | 地域の経済活動を測定 |
2月29日 | 中国PMI | 製造業とサービス業の経済の 健全性を示す |
3月1日 | ユーロ圏CPI | インフレの動向を示す |
3月1日 | ミシガン大学消費者調査(確報値) | 米国消費者の経済と個人消費の 見通しを評価 |
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MC2024-027