ホーム > マーケットビュー > 何が市場を動かしているのか?消費者、インフレそして中央銀行
何が市場を動かしているのか?消費者、インフレそして中央銀行

何が市場を動かしているのか?消費者、インフレそして中央銀行

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • 米国の消費者:12月の小売売上高は予想を上回り、新規失業保険申請件数は2022年9月以来の低水準となった
  • 中国の成長:中国の2023年10-12月期のGDP成長率は、年率換算で政策当局の目標を上回る水準まで上昇した
  • 中央銀行:ラガルドECB総裁とウォラーFRB理事は、早期利下げを期待する向きに対し冷や水を浴びせた

米国の消費者は好調

中国の成長は改善するも不均衡

インフレは良くコントロールされているように見える

中央銀行のタカ派的な発言

S&P500種指数の最高値更新

今週の見通し

注目の日程

毎週、数多くの経済データや市場データが発表されています。先週は、米小売売上高と失業保険申請件数、中国の国内総生産(GDP)成長率、英国とユーロ圏のインフレ率、中央銀行の見解が発表されました。これらのデータがどのように全体像に影響を与え、市場を動かしているものの正体を示すのに役立っているか、みていきたいと思います。

米国の消費者は好調

12月の小売売上高は予想を上回り、新規失業保険申請件数は2022年9月以来の低水準となりましたが1、これらはいずれも、米国の消費者が健全な状態にあることを示す良い兆しと言えます。また、ミシガン大学消費者信頼感指数が2021年7月以来の高水準となるなど2、米国消費者自身が好調を感じている兆しがようやく見えてきました。直近2カ月の改善は、非常に大きなものでした。

中国の成長は改善するも不均衡

2023年10-12月期の中国のGDP成長率は、年率換算で5.2%に上昇し、政策当局の目標である5%を上回ったものの、コンセンサス予想の5.3%はわずかに下回りました3。政策当局は2024年に5%の成長目標を設定する可能性が高いものの、これは今や、大幅な緩和なしでも達成可能と考えられます。加えて、鉱工業生産(6.8%)、小売売上高(7.4%)、固定資産投資(3%)が前年同月比で増加しました3

こうした良好な結果が追加刺激策を抑制するのではないかとの懸念もありますが、私はそれには懐疑的です。中国が特別国債の発行を検討しているとの情報もありますが、これは過去に3回しか発行されたことがありません4。2023年の中国の不動産投資が9.6%減少したことを考えると、不動産セクターのような分野に的を絞った景気刺激策を期待したいところです3

インフレは良くコントロールされているように見える

一部のインフレ関連データが市場に不安を与えたものの、実際にはインフレは依然として良くコントロールされており、先進国では更に低下する見通しとなっています:

  • 英国。英国の12月消費者物価指数(CPI)は予想を上回り(前年同月比3.8%上昇の事前予想に対し、実際には同4.0%上昇)、11月の前年同月比3.9%上昇を上回りました5。しかし、これは主にタバコとアルコール価格の上昇によるものでした。コアCPI(エネルギー、食品、アルコール、タバコを除いたもの)は前年同月比5.1%上昇と、前月と同様の上昇率でした5。ただしこれとは別の調査によれば、賃金の伸び(ボーナスを除く)はほぼ1年ぶりの弱いペースとなっていると報告されています6
  • ユーロ圏。ユーロ圏でも類似のパターンがみられ、12月のインフレ率は前年同月比2.9%となり、11月の同2.4%から増加しました7。ただし、わずか1年前は前年同月比9.2%であったことを忘れてはいけません7。また、食品とエネルギーを除いたインフレ率は前年同月比3.9%と、前月の同4.2%から低下しました7

調査に基づく消費者期待に注目することも、また重要です。消費者によるインフレ期待は家計の消費決定に影響するため、将来のインフレに対して予測的な動きをし、実際に期待が現実に変わることも多々あります。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、「インフレ期待は非常に重要だ。我々は多くの時間を費やし、それを注視している」と認めています8。こうしたことから、最近の消費者期待に関する調査結果には勇気づけられます:

  • 米国。ミシガン大学消費者調査において、米国の消費者の1年先のインフレ期待は、11月の4.5%から1月の2.9%へと、ここ数カ月で劇的に低下しました9。また、アトランタ地区連銀の企業インフレ期待調査によると、企業は1年先のインフレ率が2.2%まで大幅に低下すると予想しており、これはFRBのインフレ目標に近づいています10
  • ユーロ圏。欧州中央銀行(ECB)の消費者期待調査によると、今後12カ月間の消費者のユーロ圏におけるインフレ期待の中央値は、11月に3.2%に低下しました11。これは10月の4.0%から大幅な低下となり、2022年2月以来の低水準となりました11

日本でも―それが必ずしも求めているものではないにせよ―インフレ率が低下しています。日本の前年同月比インフレ率は11月の2.8%に対し12月は2.6%、コアインフレ率は11月の3.8%に対し12月は3.7%となりました12。これにより、日銀が今週の金融政策決定会合で、現状のまま特段アクションを起こさないだろうとの私たちの予想は、より確実になっています。

中央銀行のタカ派的な発言

ECBのラガルド総裁は、利下げは春ではなく夏になる可能性が高いと述べました。またFRBのウォラー理事は、3月の利下げを期待していた人々に冷水を浴びせるような、次の発言を行いました:「利下げを開始する適切な時期が来たら、整然と慎重に利下げを行うことが可能であり、そうすべきだと私は考えている…。以前ほど急いで動いたり、迅速に利下げを行う理由は見当たらない13。」

私はFRBが3月に利下げを行うとは予想しておらず、またECBによる利下げは、FRBによる利下げの開始後に始まると予想していた点を強調しておきたいと思います。よって上記のことがあったからといって、2024年に関する私の予想に何も変化はありません。また繰り返しになりますが、中央銀行のこのような発言は、一定の思惑に基づいています;金融環境の緩和を抑制したい、との思惑です。

S&P500種指数の最高値更新

先週、S&P500種指数は終値で4,839の新記録を達成し、2022年1月3日に記録した4,796を更新しました。しかし、これまで見られてきた債券利回りの低下と株価上昇の相関関係は、少なくとも一時的には崩れました。先週の債券市場は、インフレが予想以上に過熱しているとの懸念や、タカ派的な「中央銀行による発言」にも煽られ、ボラティリティが大幅に高まり、利回りが上昇しました。

例えば、ユーロ圏のインフレデータの上昇を受け、ユーロ圏の国債利回りが大幅に上昇し、ドイツ10年債利回りは2.18%から2.34%に上昇しました14。米小売売上高の発表後には、米国債利回りも大幅に上昇しました。また、中央銀行によるタカ派的な発言も、債券利回りを押し上げました。

しかし、それでも株価の上昇は止まりませんでした。きっかけとなったのは、テクノロジー・セクターを巡る熱狂でした。TSMC(台湾セミコンダクター)の非常に前向きなガイダンスに端を発した半導体セクターに始まり、これがテクノロジー株全般に波及しました。その原動力となったのは、テクノロジー企業の業績改善の可能性及び人工知能の可能性に対する興奮でした。これが全体的な強気心理につながり、様々なセクターの株価を引き上げることにつながりました。

今週の見通し

今週は、日銀、カナダ銀行、ECBなど中央銀行による政策金利の決定が目白押しとなっています。そして、FRBにとって最も重要なインフレ指標である個人消費支出に着目し、翌週開催されるFRB会合で何が発表されるか、見極めたいと考えています。

ただし、木を見て森を見ずになってはいけません。私見では、特にヘッドラインインフレについて、不完全なインフレデータが出たとしても、特に問題にはならないと考えています。ディスインフレは進行中であり、今後も続くでしょう。私の考えでは、FRBが3月に利下げを始めるか5月に利下げを始めるかは問題ではありません。FRBは今年、大幅な利下げを実施するでしょうし、他の欧米先進国の中央銀行も同様に利下げを開始するでしょう。私は、経済が短期的にはバンピー(でこぼこした)で短い着陸に向かっており、その後は今年後半にかけて、経済成長が再加速すると考えています。

投資機会のある分野をいくつか挙げるとすれば、私は依然として、投資適格債に加え、小型株や米国外の株、テクノロジー株が、今後数カ月は良好なパフォーマンスを示すと予想しています。しかし私はまた、株式、債券、オルタナティブという3つの主要資産クラスに十分に分散投資することが重要だと考えています。投資の新年はまだ始まったばかりで、今後紆余曲折や驚きの展開が待ち受けているでしょう。

注目の日程

公表日 指標等 内容
1月23日 日銀決定会合及び記者会見 金利の道筋に関する
最新の決定を発表
1月23日 欧州中央銀行貸出調査 企業・家計向け融資の需給に
関する情報を提供
1月23日 S&Pグローバル日本PMI 製造業とサービス業の
経済の健全性を示す
1月24日 S&Pグローバルユーロ圏PMI 製造業とサービス業の
経済の健全性を示す
1月24日 S&Pグローバル英国PMI 製造業とサービス業の
経済の健全性を示す
1月24日 S&Pグローバル米国PMI 製造業とサービス業の
経済の健全性を示す
1月24日 カナダ銀行決定会合
及び記者会見
金利の道筋に関する
最新の決定を発表
1月25日 ドイツIfo景況感指数 現在のドイツの景況感を評価し、
今後6ヶ月間の予想を測定
1月25日 欧州中央銀行決定会合
及び記者会見
金利の道筋に関する
最新の決定を発表
1月25日 米国耐久財受注 耐久財の新規発注を追跡
1月25日 米国国内総生産 地域の経済活動を測定
1月25日 米国新築住宅販売戸数 住宅セクターの健全性を示す
1月25日 日銀決定会合議事要旨 中央銀行の意思決定プロセスについて
更なる洞察を与える
1月25日 英国GfK消費者信頼感 英国の消費者の家計と経済に
関する見方を追跡
1月26日 米国PCE価格指数 インフレの動向を示す
1月26日 米国個人支出 米国の消費者の支出額の変化を測定
1月26日 米国個人所得 賃金、給与、公的給付、配当、利子、
事業所有その他から得られる所得を測定
1月26日 米国住宅販売成約 住宅セクターの健全性を示す
1月26日 米国原油・ガソリン在庫 エネルギー需給を示すのに役立つ
  • 1.出所:CNBC、“Weekly jobless claims post lowest reading since September 2022”、2024年1月18日
  • 2.出所:ミシガン大学消費者調査(速報値)、2024年1月19日
  • 3.出所:中国国家統計局、2024年1月17日
  • 4.出所:ブルームバーグニュース、“Why China Is Considering Rarely Used Special Bonds to Stimulate Its Economy”、2024年1月21日
  • 5.出所:CPI、英国国家統計局、2024年1月17日
  • 6.出所:ロイター、“UK wage growth slows again, offering some relief to BoE (Bank of England)”、2024年1月16日
  • 7.出所:ユーロスタット、2024年1月17日
  • 8.出所: FOMC記者会見、2022年9月22日
  • 9.出所:ミシガン大学消費者調査(速報値)、2024年1月19日
  • 10.出所:アトランタ地区連銀、企業インフレ期待、2024年1月
  • 11.出所:ECB、2024年1月16日
  • 12.出所:総務省
  • 13.出所:CNBC、“Fed’s Christopher Waller advocates moving ‘carefully’ with rate cuts”、2024年1月16日
  • 14.出所:ブルームバーグ、2024年1月19日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2024-010

本サイトの記事は(株)ZUUが情報収集し作成したものです。記事の内容・情報に関しては作成時点のもので、変更の可能性があります。また、一部、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供している記事を掲載している場合があります。 本サイトは特定の商品、株式、投資信託、そのほかの金融商品やサービスなどの勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。本サイトに掲載されている情報のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当サイトご利用にあたっては、下記サイトポリシーをご確認いただけますようお願いいたします。