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目次
中央銀行に注目が集まる:今週、米国、英国、オーストラリアの中央銀行の会合がニュースの見出しになるだろう
エネルギーが議論のトピックに:エネルギー価格が上昇する中、英国で重要な気候変動会議が開催され、OPECプラスは増産を求める圧力の下で戦略を決定
雇用状況について何が得られるか?:今週、重要な米雇用統計が発表されるほか、企業収益に関するニュースが続く見込み
①米連邦準備理事会の金融政策決定会合:記者会見でのパウエル議長の発言に注目
②イングランド銀行の会合:BOEが利上げを実施する可能性があると見込む
③オーストラリア準備銀行(RBA)の会合:BOEが利上げを実施する可能性があると見込む
④COP26:エネルギー価格の高騰が続く中、気候変動との闘いに協力して取り組むことが困難に
⑤OPECプラス会合:わずかな増産ペースの維持での同意と見込む
⑥続く決算発表:サプライチェーンの混乱と人件費の上昇により市場予想を下回る決算が散見される
⑦米雇用統計:10月の雇用統計は雇用の正常化を示す最初の統計になるだろう
⑧日本の株式市場:総選挙での自民党の勝利や人・モノの移動の改善が、日本の株式市場の上昇を後押しする要因になるだろう
⑨新型コロナウイルスの感染状況:感染状況は落ち着きを見せているものの、引き続き新型コロナは重大な経済と市場の問題である
11月の初めは、重要イベントが目白押しで、慌ただしく始まっています。米国、英国、オーストラリアでの中央銀行の金融政策決定会合は、ニュースの見出しになると予想されます。また、エネルギー価格が上昇する中、英国では重要な気候変動会議が開催されます。そして、原油増産を要求する世界的な圧力の中、世界の主要な石油輸出国が一堂に会し、戦略決定会合を開きます。さらに、重要な米雇用統計の発表のほか、企業収益に関するニュースが続くと予想されます。以下、今週以降に私が注目している9つについて考えてみたいと思います。
ついに私たちが待ち望んでいた瞬間がやってくるかもしれません。米連邦準備理事会(FRB)は、今週の金融政策決定会合で、テーパリング(量的金融緩和の縮小)の開始を発表すると見込まれています。会合を前に、金融市場では価格の変動性(ボラティリティ)が高まる可能性がありますが、それは軽微だと考えます。今まで、FRBは、テーパリングがまもなく開始されると十分すぎるほど伝えているので、すでに多くが価格に織り込まれているとみています。そこで、私は、パウエルFRB議長の記者会見に注目しており、パウエル議長の発言の中で小さな変化がないかどうか、注意深く耳を傾けたいと考えています。ただし、インフレに惑わされてFRBが「忍耐強く緩和的な姿勢」を変えることはないと思います。利上げとテーパリングは分離(デカップリング)されているので、2022年後半まで利上げが始まることはないと予想されます。
イングランド銀行(BOE)は最近、FRBよりもタカ派であり、今週の会合で政策金利を引き上げると予想しています。先週、大規模な資産購入プログラムを速やかに終了させ、市場を驚かせたカナダ銀行(中央銀行)の会合に続き、BOEの会合が開催されます。私はBOEがBOCに続くと思います。一時帰休者への支援策の終了の影響を見るためにBOEは数カ月は行動しないと主張する人もいますが、私は、BOEが時間的余裕があると認識しているとは思いません。BOEのように、一部の先進国の中央銀行は、よりタカ派になっている可能性がありますが、FRBは後れをとっていると考えます。
オーストラリアの中央銀行も、今週、会合を開きます。オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は先週、資産購入を通じた国債利回りの誘導目標を守ることができず、イールドカーブをコントロールできなくなったため、重要な会合となります。RBAが今週の会合で、利回り目標プログラムを正式に終了するのではないかとの見方が強まっています。
英国では、第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が11月12日まで開催されます。気候変動との闘いに協力して取り組むことは、エネルギー価格の高騰でますます難しくなっています。一部の国では、サプライチェーンの混乱とエネルギー価格の上昇という現状の下、環境に関する規制を緩和するように求める圧力が存在します。電力需要の増加と天然ガス価格の高騰により石炭火力発電所を再稼働させた国もあれば、化石燃料への課税を撤廃して実質的に支援している国もあります。2016年4月22日に気候変動に対するパリ協定の署名が始まったとき、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油価格は1バレル=44.23米ドル、ブレント原油は1バレル=45.59米ドル、天然ガスは100万BTU(英国熱量単位)=2.08米ドル、石炭は1トン=約80米ドルでした 1 。現状は全く異なります。WTI原油は1バレル=83.57米ドル、ブレント原油は1バレル=83.20米ドル、天然ガスは100万BTU=5.54米ドル、石炭は1トン=233米ドルです 1 。
産油国への増産圧力が強まっています。これまでのところ、主要産油国は非常に統制の取れた行動を取っています。石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産出国で構成するOPECプラスは、11月4日に会合を開きますが、私は、各国がそのスタンスを維持し、控えめな増産ペースの維持に同意するだけであると考えます。つまり、少なくとも現時点では、エネルギー価格の上昇が続く可能性が高そうです。一方で、明るい材料の1つは、イランが核開発計画に関する交渉を再開するというニュースです。これは、何らかの形で取引が成立した場合、イランの多大な輸出が供給を増やし、価格圧力を和らげることにつながる可能性があります。
先週、ようやく、サプライチェーンの混乱と人件費の上昇により、収益が予想を下回った決算がいくつか見られました。これらの企業の状況はあまり良いものではなく、予想を大きく下回りましたが、市場の反応は限定的でした。今週は一部の小売業者を含む多くの企業が決算発表を行う予定であり、賃金の伸びが最も注目されるでしょう。賃金の上昇が長引くほど、企業や投資家にとって問題となる可能性が高いため、賃金の上昇を注視したいと考えています。
私は以前から触れていましたが、10月の雇用統計(11月5日発表予定)が、(子どもが学校に戻り、追加の失業手当が終了し、最も新しい新型コロナ感染の波のピークが一段落した)9月中旬から10月中旬の雇用状況を反映することを踏まえると、これが雇用市場の正常化を映しだす最初の統計になる可能性があります。9月の雇用統計には失望させられましたが、10月は改善すると見込んでいます。企業にとってますます問題となっている賃金の伸びに細心の注意を払いたいと考えています。
日本の株式市場は、自由民主党が衆議院で過半数を維持した総選挙(岸田新首相は過半数を獲得できないのではと見込まれていました)の結果を織り込むでしょう。これは、岸田首相が財政刺激策を含む経済政策を進められる可能性が高いことを意味します。株式市場の反応は前向きなものであり、この見方は続くとみています。これは、投資家心理の改善に後押しされた、日本の株式市場の回復の始まりの可能性があり、注目に値すると私は考えます。日本ではワクチン接種率が高く(ロイターのCOVID-19トラッカーによると、人口の約75%が2回のワクチン接種を完了した見込みです)、経済再開が勢いを増しています。たとえば、レストラン、ショッピングセンター、その他の小売業の人・モノの移動量は改善傾向にあり、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)前の水準を6%下回っているに過ぎません 2 。
株式市場では、新型コロナをこれ以上気にかけない、なぜなら、乗り越えたからだとの声がよく聞かれています。これは、新型コロナの感染が収まっているときに享受することができる一種のぜいたくでしょう。しかし、見誤ってはいけません。特にアジアで感染者数が急激に増加すると、組み立てラインや工場、港の操業停止を引き起こす可能性があり、新型コロナウイルスは依然として重大な経済と市場の問題です。
1.出所:ブルームバーグ L.P. 、2021年11月1日
2.出所:グーグル・モビリティデータ、2021年10月29日
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2021-183