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変異ウイルスへの懸念が強まっている:変異ウイルスのデルタ株の感染拡大に世界が注視している中、ラムダ株の感染も広がっている
イスラエルではデルタ株が懸念される:ワクチン接種率が高いイスラエルでも、変異ウイルスに対して一定の制限措置を検討する必要性がある
感染状況が悪化した場合、市場が動く可能性:2020年の厳しい都市封鎖措置が再度実施されることはないものの、感染者の増加により株式市場のボラティリティが高まる可能性がある
確認された中で最も広まりやすく、伝染性の高いウイルスであるデルタ株が、世界的な懸念材料に
ワクチン接種率の高いイスラエルでも新規感染者が増加している。ただし、デルタ株による重篤化を防ぐのに、ワクチンは依然として高い有効性があることが明らかに
ラムダ株に対する一部のワクチンの有効性は低いとの懸念が存在
新興市場への投資では、単に広範なエクスポージャーを追求するのではなく、成長の機会をボトムアップで捉えるという、優れた投資アプローチが必要である
2020年のほとんどの期間において、私が書いたブログでは、例外なく新型コロナウイルスの世界的な大流行(パンデミック)について触れていたと思います。その後、有効性の高いワクチンが開発されたことは、私には医学界の奇跡にほかなりませんでした。そして、経済の再開と世界経済の回復がより多くの注目を集めましたし、1年前には想像もできなかったインフレについても懸念が生じました。しかし、最近の出来事を踏まえて、私は本稿では新型コロナウイルスについて再び取り上げようと思います。
新型コロナウイルスの変異ウイルスであるデルタ株(B.1.617、インドで初めて確認される)は急速に拡大しており、世界保健機関(WHO)はこれを「懸念すべき変異株」と描写しました。具体的には、デルタ株は英国で初めて確認されたアルファ株よりも約50%伝播しやすいと言われています(アルファ株は従来株よりも約50%速く伝播しやすい) 1 。分子医学の教授であり、米スクリプス・トランスレーショナル研究所の所長であるエリック・トポルは、デルタ株が厄介な変異ウイルスであり、「これまでに確認された中で最も広まりやすく、伝染性の高いウイルスである。確かに、これはスーパースプレッダー変異株だ。」と説明しています 2 。
もちろん、デルタ株はワクチン接種率が低い国にとっては懸念すべきウイルスです。その一方で、ワクチン接種率の高い国にとって、なぜそれが懸念されるべきなのかという質問を受けました。そのため、私は、ワクチン接種の有効な実践におけるモデルであると述べてきたイスラエルの状況を見てみようと思います。
イスラエルはワクチン接種運動において大きな成功を収めており、人口の59.9%が2回のワクチン接種を受け、65.4%が少なくとも1回の接種を受けました 3 。イスラエルの新規感染者数は、5月30日に5人まで減少しましたが、デルタ株の広がりにより、7月5日時点では496人に増加しました 4 。イスラエルのベネット首相は、デルタ株が「急速に感染拡大した」場合、イスラエルは、感染率が低下した際に解除された制限措置を再度取る必要が生じるかもしれないと警告しました 5 。これは、ファイザーなどのワクチンが、デルタ株に対するワクチンの効果が当初考えられていたよりも低いと見込まれるためです。イスラエルでは、ファイザー製のワクチンが入院を防ぐ効果は93%であるものの、感染と症状発生を防ぐ有効性が64%しかないことが明らかになりました 6 。英国での調査でもほぼ同様の結果でした。
これはポジティブである一方で、ネガティブな面もあります。ポジティブな点としては、ファイザーやモデルナ製のワクチンは、デルタ株による重篤化を防ぐのに依然として高い有効性があることです。一方、懸念すべき点としては、ウイルスの拡散を抑えるのにはそれほど効果的ではないかもしれない点が挙げられます。そのため、米国のようにワクチン接種率の低い地域と高い地域が混在している国では、デルタ株の感染が広がる可能性があります。実際のところ、ほぼすべてのマスクの着用義務が撤廃されている現在、期待されている「ワクチン接種による防壁」は、「ワクチン接種による減速バンプ」でしかないのかもしれません。
英国では7月19日に大部分の行動規制を解除する予定であり、これにはマスク着用や社会的距離の要件の解除が含まれます(ただし、感染者接触・追跡制度は引き続き実施され、検査で陽性となった場合は隔離が義務づけられます)。高いワクチン接種率(アストラゼネカとファイザーワクチンを使用)と新規感染者数の推移とともに、この解除措置はウイルスに関するデータを観察する興味深いテストケースとなるでしょう。また、デルタ株に対するその他の多くのワクチンの有効性は分かっていませんが、その有効性は他のコロナウイルスに対するよりも低い可能性があります。集団接種に使用した(あるいは使用中の)ワクチンの種類によっては国ごとにワクチンの有効性が異なってくる可能性があります。
最後に、注目すべき変異ウイルスとして南米で初めて確認されたラムダ株(C.37)があります。WHOによる「懸念すべき変異株」にはまだ指定されていませんが、南米での急速な感染拡大を考えると、指定される可能性があります。また、一部のワクチンが持つラムダ株に対する有効性は低いのではないか、との懸念がすでに示されており、今後を注視する必要があるでしょう。
現実には、国におけるワクチン接種の時間がかかるほど、さらに強力な変異株が発生するリスクが高まります。これは、ワクチン接種において先進国でよりもはるかに多くの支援を必要としている新興国で特に懸念されます。新型コロナウイルスのワクチン開発は医学界の奇跡ですが、ワクチンはその配布次第です—そしてもちろん、ワクチンは出現し続ける変異株に対して完全に有効というわけではありません。
なぜこれが投資家にとって重要なのでしょうか?私たちは、確かに2020年の新型コロナウイルスの第一波に経験したような都市封鎖(ロックダウン)を予想していません(イスラエルが検討していることから明らかなように、いくつかの新たな厳格処置が取られる可能性はあります)。それでも、ニュースの状況によって、市場は反応するかもしれません。たとえば、経済再開を受けて英国に対する市場のセンチメントが強気になっている一方で、ウイルス政策の方針が180度転換することで、ただちに弱気になる可能性があります。
最近、インフレ圧力と経済成長の改善の兆候にもかかわらず、米10年国債利回りが低下しましたが、多くの市場関係者は、これはデルタ株の感染拡大によるものと考えています。私も同じように考えます。同様に、新型コロナウイルスの感染率が上昇し続ける場合、または伝染力や危険度が高い変異ウイルスが出現した場合、株式市場のボラティリティは高まり、急落する可能性があります。また、新興市場に関しては、感染力の強い変異ウイルスが原因で、一部の国で経済回復が遅れる可能性があります。この点は、新興市場投資において単に広範なエクスポージャーを追求するのではなく、成長の機会をボトムアップで捉えるという、優れた投資アプローチへの必要性を改めて認識させるものと言えるでしょう。
1.出所:Yale Medicine、“5 Things to Know About the Delta Variant”、2021年7月2日
2.出所:Scientific American、“How Dangerous Is the Delta Variant, and Will It Cause a COVID Surge in the U.S.?”、2021年6月29日
3.出所:イスラエル保険証、2021年7月5日時点
4.出所:ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター
5.出所:Medical Xpress、“Israel data ‘preliminary signal’ Delta variant can bypass vaccine: expert”、2021年7月5日
6.出所:NBCニュース、“Israel sees drop in Pfizer Covid vaccine protection, still strong in severe illness”、2021年7月6日
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2021-123