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目次
強気心理が低下し、弱気心理が上昇
高いバリュエーション
インフレの再燃は、市場が直面する最大のリスクの可能性
債券自警団もリスクを生じさせ得る
欧州株も不安の壁を登りつつある
金融政策が支援的であることが、株価上昇を正当化する可能性
不安の壁を越えた先に
これらは投資家にとって何を意味するのか?
感謝を捧げる
今後の展望
注目の日程
米国株は先週、個人投資家の懸念が高まっているにもかかわらず、小型株の力強い動きを含め、続伸しました。では一体何が、株式がいわゆる「不安の壁」を登るのを後押ししているのでしょうか?米国株の投資家たちは明らかに、関税や非常に厳格な移民政策から来る潜在的な経済的影響等のリスクについて見ないふりをする一方で、トランプ次期政権による大幅な規制緩和や減税の可能性といったポジティブな誘因に焦点を当てています。本レポートでは、リスクについて説明し、楽観的な見方が正当化されると考えに至る理由を深堀りし、世界の注目すべきポジティブなトレンドを紹介したいと思います。
まず、不安の壁の高さについて感度を得ましょう。以下は、11月21日に発表された、米個人投資家協会(AAII)センチメント調査の直近の週の結果となります:
私は昨年来、バリュエーションの高さを懸念するお客様の声もよく耳にしてきました。確かに一部の銘柄、特に米国の大型株は、株価収益率が非常に高くなっており、完璧あるいは完璧に近い価格となっています。しかし、現在進行中の株価上昇を見れば、ほとんどの投資家がバリュエーションについて見ないふりをしつつ、投資を続けていることは明らかです。
以前にも申し上げたとおり、関税と移民という2つの主要な政策リスクについて言えば、移民政策の方が、既に労働市場が(特に特定の産業で)タイトとなっており、人件費を押し上げる可能性があることから、私にははるかに大きな経済的懸念に思われます。移民を強制送還すれば、関税のように元に戻すということもできず、粘着的かつ高いインフレをもたらす要因ともなり得ます。従って、当然のことながら、私は今後の最大のリスクはインフレ再燃の可能性だと考えています。そうなれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和のペースは更に緩やかとなり、停止する可能性さえあります。
私は、緩和の道筋はよりゆるやかになるものの、重要なことに変わりないだろうと考えています。先週発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を読んだ後でも、今後のFRBについての私の見通しに変化はありませんでした。議事要旨では、緩和のペースは数ヶ月前の予想よりいくぶん緩やかになると考えられるものの、FRBは依然としてデータ次第で判断する姿勢を維持することが確認されました。私は、FRBが12月に利下げをするとは予想していません。従前からそのように考えていましたが、今回公表された議事要旨の以下の記述によってそれが確信に変わりました:「インフレ見通しの上方リスクにはほとんど変化がなく、雇用と成長の下方リスクはいくらか低下したとみられる」 2。これは、最新の個人消費支出(PCE)価格指数からも裏付けられる形となりました。予想通りではあるものの、インフレは依然高く、最近はディスインフレにそれほど進展が見られていません。これはFRBが、短期的により慎重になり得ることを示唆しています。
もう1つのリスクは、財政赤字を拡大させる政策への抗議として国債の売却を行う投資家の間で、債券自警主義が起こる可能性です。そのような売りは利回りの上昇を招き、株価の低下圧力となる可能性があります。
しかし先週は、スコット・ベッセント氏が米財務長官に指名されたことが主な要因となり、利回り上昇の反転が見られました。ベッセント氏は、関税に関しては理性的で穏健派と見なされています。さらに重要なのはベッセント氏が、財政保守派だと考えられていることです。それはまさに今、米国が必要としていることでしょう。ベッセント氏は、連邦財政赤字を国内総生産(GDP)の3%まで削減する計画(欧州連合(EU)も加盟国に対して使用しているベンチマーク)を提案しました。同氏の財務長官指名と財政規律強化の可能性は、大統領選のかなり前からトランプがオッズでリードし始めて以来見られてきた、米10年物国債「利回りの上昇」の大部分を逆転させるのに十分でした。米10年物国債利回りは先週、4.4%を大きく上回る水準から4.175%まで低下し、投資家の懸念にもかかわらず、最近株価に追い風が吹いていることを説明する一助となっています3 。
また世界の他の地域でも、不安を見過ごし、株価が好調に推移しているのが見てとれます。MSCI欧州指数で示される欧州株は、いくつかの困難な展開にもかかわらず、先週1.8%のリターンを記録しました4 。こうした最近の動きのほんの一部ですが、以下に記載しました:
まとめると、私は市場が不安の壁を登りつつあるのを見て嬉しく思っています―特に金融政策が支援的な場合は、困難な状況であっても楽観主義が正当化されることが多いと考えられます。またそれが市場に広がりつつあることも嬉しく思います。2025年に景気の再加速が予想されることに鑑みれば、それも正当化されるでしょう。
懸念材料ばかりではないことを付け加えておく必要があります。良い材料も見られます:
これらのことは、株価が不安の壁を登りつつあるのが正当なことだと示唆しています。しかし私は、米国株式市場の割高なセクター(大型のグロース株、特にテクノロジー銘柄)への「適正な規模」でのエクスポージャーを有して利益を得つつ、バリュエーションが低く、来年の景気再加速の恩恵を手堅く受ける可能性のある米国中小型株へのエクスポージャーを増やすことが理にかなっていると考えます。
また、米国以外の株式や債券へのエクスポージャーを十分に確保する時期でもあると考えます。今はボラティリティが低く、誤った安心感に浸っているかもしれませんが、今後数カ月のうちに波乱や売り越しがあるでしょう。これは、歴史的に株式との相関が低いオルタナティブへのエクスポージャーを持つことの重要性を示唆しています;不動産へのエクスポージャーを増やすには、今が特に魅力的な時期かもしれません。
先週木曜日は米国のサンクスギビング(感謝祭)でした。感謝祭は米国(そしてカナダ)の祝日かもしれませんが、感謝は世界共通です。だから、愛する人たちと過ごし、自分が何に感謝しているかを考える素晴らしい機会でした。家族(毛皮のある家族もそうでない家族も)だけでなく、私は毎日好きな仕事ができることに大いに感謝し、それが当然だと思わないように努めています。この仕事が好きな理由の1つは、多くの優秀で洞察力があり、かつ親切で善良な同僚たちと働く機会に恵まれているということです。特に、毎日私に示唆を与えてくれるグローバル・マーケット・ストラテジー・オフィスのメンバーには感謝しています。そして、毎週レモンをレモネードに変えてくれる、長年の(そして長く大変な思いをしている)エディターに感謝しています(編集部注:全く大変ではありません!)。そして、読者の皆さんに心から感謝しています。忙しい一週間の合間を縫って、私の記事を読んでくださることに、つつしんで御礼申し上げます。
今週は重要な一週間となるでしょう。FRBがこれ以上の雇用悪化を望まないとしているため、米国雇用動態調査(JOLTS)と11月の雇用統計に注目したいと思います。また、ユーロ圏の小売売上高、ミシガン大学消費者調査(速報値)、いつも良質な事例情報が盛りだくさんのFRBのベージュブックも注視しています。
公表日 | 指標等 | 内容 |
---|---|---|
12月2日 | インド製造業購買担当者景気指数 | 製造業の経済の健全性を示す |
12月2日 | ユーロ圏失業率 | 労働市場の健全性を示す |
12月3日 | 米国雇用動態調査(JOLTS) | 求人、採用、離職に関するデータを収集 |
12月4日 | オーストラリア国内総生産 | 地域の経済活動状況を測定 |
12月4日 | FRBベージュブック (米地区連銀経済報告) | FRBの各地区における現在の経済状況に 関する事例調査結果に基づく情報を収集 |
12月5日 | ユーロ圏小売売上高 | 小売業の健全性を示す |
12月5日 | 日本全世帯家計調査 | 消費の健全性を追跡 |
12月5日 | インド準備銀行金融政策決定 | 金利の道筋を追跡 |
12月6日 | 米国雇用統計 | 労働市場の健全性を示す |
12月6日 | カナダ雇用統計 | 労働市場の健全性を示す |
12月6日 | ミシガン大学消費者調査 | 消費者心理とインフレ期待に関する指数 |
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2024-148